常温常圧の「超電導」に関する論文の混乱と再現可能性について科学雑誌Scienceが再び解説
https://gigazine.net/news/20230802-superconductor-preprints/
特定の物質を冷やすと電気抵抗が0になる「超電導」という現象について、「常温でも超電導を実現する」というこれまでの常識を覆す論文が2023年7月22日に提出されました。以前この論文について解説した科学雑誌Scienceのライターで有機化学者のデレク・ロウ氏が、再現可能性や論文発表時の混乱について解説しています。

上記の論文が発表されて以降、さまざまな研究機関が超電導の再現に取り組んでいますが、一部では「ことごとく失敗した」などの報告が上がっており、必ずしも常に再現が可能であるものではないことがわかっています。一方で韓国の瀋陽国立材料科学研究所(SYNL)やアメリカのローレンス・バークレー国立研究所からは「再現に成功した」と報告されており、今後の調査の進展が期待されています。

8月1日時点では、中国の華中科技大学から、LK-99がマイスナー効果によって磁石の上に浮遊し、常温超電導の可能性を示しているとの報告がありますが、この報告に伴い発表されたビデオの真偽はまだ確認されていません。SYNLとローレンス・バークレー国立研究所により提出された2つのプレプリントは、密度汎関数理論に基づいてLK-99が優れた超電導体である可能性を示唆しています。どちらの研究も超電導に重要な役割を果たすフェルミ準位の電子構造に焦点を当てていますが、LK-99の挙動にばらつきがあるのも確認されているとのこと。

締めの言葉としてロウ氏は「現時点では、私は慎重に楽観的な見方をしています。SYNLとローレンス・バークレーの計算は非常に前向きな進展であり、この件を『何の説明もできない』という冷ややかな結論から脱却させるものです。私はより多くの再現データを待っていますが、今回の件はこれまで世界が見てきた常温常圧超電導現象の中で最も信ぴょう性が高いものであり、今後数日、数週間は非常に興味深いものになるでしょう」と述べました。