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「日本人のセックスレスどう思う?」還暦コラムニストが懸念する本当の理由

夫婦のセックスレスに若者の草食化。性欲だけでなく、気力そのものが今の日本社会に欠けている気がする
コラムの担当編集者から「日本人のセックスレスについてどう思いますか」と聞かれた。先日還暦を迎えたばかりの私になんてことを聞くのかと思ったが、確かに自分の周りでも、夫婦のセックスレスや若者の草食化といった話はよく聞く
セックスレス問題を扱った『あなたがしてくれなくても』というドラマが人気だったらしいが、それも人々の関心の高さ故だろう。

日本人はどのくらい「していない」のだろうか。

日本家族計画協会の調査によると、セックスレス(1カ月の間に1度も性行為がない)夫婦は2004年の約31%から、2016年には約47%に増加(対象は16~49歳)。調査方法を変えた2020年の同協会の調査では、「1年以上していない」人が男性で約41%、女性では約50%もいる(調査対象は20~69歳で既婚・未婚を問わない)。

国際比較では、少し古いがデュレックス社による2005年の調査「グローバル・セックスサーベイ」が有名だ。セックスの頻度を問う質問で、1年間に45回という日本は調査対象41カ国の中で最下位だった。1位はギリシャで138回。日本は世界平均103回の半分以下である。

結婚前の若者たちもしていない。内閣府が昨年発表した男女共同参画白書によれば、20代男性の7割、20代女性の5割が「配偶者、恋人はいない」状態で、20代の独身男性については、4割がデートの経験すらないという。

恋愛に興味がなく、性行為の経験がない「草食系」が日本で増えているのは、1974~17年に実施された「青少年の性行動全国調査」からも明らからしい。

20代前半で来日した私は、デートをする時間もお金もなかったが、決して草食ではなかった。日本語学校のクラスメイトだった北京出身の女性といい仲になったこともあるし、雑誌・新聞を配送するアルバイトをしていたときは、配達先のコンビニで働いていた女性を好きになった。

「私が中国語を教えるから、日本語の会話相手になってくれないか」とラブレターを渡したものの、見事に振られてしまったけれど。そしてその後結婚し、4人の子供をもうけている。
セックスの問題は少子化にも関わる社会全体の問題
私にとって、これらは至って普通の経験だったのだが、驚いたことに性欲のない人が今の日本には多いのだ。性欲だけではない。物欲や金銭欲、労働欲のもととなる気力そのものが、若者にも中高年にも欠けている気がする。そうした気力のなさが性欲をも減退させているのかもしれない。

この現代、確かに面倒な恋愛をしなくても、ビデオや写真などで簡単に性欲を解消できる。でも恋愛なぞしなくていいという人が増えれば、結婚件数が増えないだけでなく、社会全体の活力も失われるのではないか。

また、夫婦が他の方法で性欲を満たせるから「セックスレスでも問題なし」と考えるようになったら、家庭の概念そのものが壊れてしまうだろう。セックスの問題は少子化にも関わる社会全体の問題だ。

お金がないのが「しない」理由ともいわれるが、みんながみんな金銭的に困っているわけでもないだろう。

そう考えると、今の日本人が恋愛や結婚、子育てに消極的なのは「傷つくのが嫌」「失敗が怖い」「生活水準を下げたくない」といった自分本位の考えによるところが大きい気がする。

しかし失敗や犠牲を伴わない人生は、喜びや収穫も少ないはずだ。「もっと性欲を持て」と言うわけではないが、若い人には特に、人を愛する気持ちを持ってもらいたい。そして、それを相手に伝える勇気を持ってもらいたい。

その先にあるのがセックスだ。夫婦のセックスレスも、相手を思いやりそれを伝える努力を怠らなければ、自然と解消されていくのではないか。人を愛することでしか得られない幸福感がある。ぜひ果敢に「愛」に挑んでほしい。