「このままでは犯罪者だ」国内で中国版の特殊詐欺、女子留学生6人に…1850万円被害
中国の警察や公安職員を装い、中国人留学生を脅して現金を送金させた上、誘拐事件を自作自演するよう指示して家族から身代金をだまし取る事件が相次いでいることが捜査関係者への取材でわかった。警視庁が虚偽の誘拐事件の捜査を通じて把握した。6月以降、被害は少なくとも計約1850万円に上り、警視庁が警戒を強めている。
捜査関係者によると、東京都内では6月以降、日本の大学や日本語学校に通う10~20歳代の中国人留学生の女性6人が、同様の被害に遭った。
いずれも「中国公安局」や「上海警察」の職員などを名乗る人物から突然、スマートフォンに電話があり、「逮捕状が出ている」「このままでは犯罪者だ」などと身に覚えのないことを言われて脅された。その後、逮捕を免れるための「保証金」などの名目で金を要求された。電話の発信元は中国の電話番号だった。
一部の留学生は実際に金を払ったが、さらに60万元(約1200万円)~300万元(約6000万円)の高額な現金を要求されるなどし、6人とも最終的に「払えない」と伝えていた。すると、詐欺グループは「日本で誘拐されたと親元に連絡しろ」などと要求してきたという。
6人は断れず、それぞれ都内や千葉県のホテルなどに行き、誘拐犯に縛られたように見える写真を自ら撮影して、中国の家族に送信していた。絵の具や口紅などを顔に塗り、暴行を受けて出血したように装うなどしていた。
6人のうち3人の家族がこれを信じ、身代金として100万~600万円を指定口座に振り込んだ。子どもの身を案じた家族側から110番を受けた警視庁が誘拐事件として捜査に乗り出し、留学生を現場で見つけて事件が発覚した。
警視庁は、中国の詐欺グループが何らかの手段で留学生の携帯電話番号を入手したとみている。留学生の金銭被害については詐欺事件として捜査しているが、身代金については中国国内の被害で、捜査対象にならないとみられる。
警視庁は被害がさらに拡大する恐れがあるとみており、留学生向けの啓発チラシを作成し、大学や日本語学校で配布を始めた。在日中国大使館にも情報提供し、注意喚起している。
警察官などを装って金を詐取する手口は、日本の特殊詐欺と共通する。中国では「電信詐欺」と呼ばれ、習近平(シージンピン)国家主席が2021年4月に対策強化を求める指示を出し、捜査を強化してきた経緯がある。
中国の犯罪事情に詳しい一橋大の王雲海教授(刑事法)は「中国での対策強化を受け、現地の詐欺グループが中国外の同胞に標的を移している可能性がある。留学したばかりで、生活に不慣れな学生は格好の餌食だ。留学生の相談先を充実させ、周知を進めていく必要がある」と話した。
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