歴史観なくして政治を語れない

私の根っこにあったのは、角さん(田中角栄元首相)の言葉です。角さんはよく、こう言っていました。

「戦争を知っているやつが世の中の中心である限り、日本は安全だ。戦争を知らないやつが出てきて日本の中核になったとき、怖いなあ」

そのころ、角さんとはたいへん親しくさせていただいていたので、私が「また戦争をやれっていうことですか」と軽口をたたいたら、ものすごく怒られた。「そうじゃない。絶対戦争なんかダメだ。だから、経験者が戦争の悲惨さを教えてやれ」とね。

私の中には、歴史観なくして政治を語れない、という思いが強くあります。それで歴史家を招いて、明治から勉強を始めました。その成果は『日本の近現代史述講 歴史をつくるもの(上・下)』(中央公論新社)にまとめてあります。

――いまの政治家はきちんとした歴史観を持っていると思いますか。
戦争を美化する風潮が強すぎると感じます。極めて危険だと思います。

いま世界の状況は、日本が戦争に至る直前の昭和初期と非常に似ていると思います。英連邦は1932年に連邦内だけ関税を安くするオタワ協定を結びました。保護貿易主義です。さらに同時期、英連邦、米国が金本位制を離脱して通貨安を誘導させました。

最近の米中貿易戦争で起きている現象は、保護貿易・通貨安を引き起こしています。まさに昭和初期と同じだと思います。戦争にならないように祈るだけです。
https://news.yahoo.co.jp/feature/1416/