蹴られ、かみつかれ、押し倒され…介護現場で絶えない暴力、セクハラ 右腕に後遺症残す元職員が語った

 介護職員が利用者やその家族から、暴力や嫌がらせを受けるケースが後を絶たない。かつて特別養護老人ホームに勤務していた千葉県内の女性(54)は、利用者から受けた暴力で、右腕が不自由になった。
「暴力やセクハラは日常茶飯事。職員は我慢するのが当たり前だった」。専門家は、相談しやすい職場環境づくりや医療との連携が必要だと訴える。(鈴木みのり)
◆残るしびれ、重い物持てず…退職し収入減
女性が暴力を受けたのは2016年2月。朝、施設の台所に1人で入る認知症の男性に「危ない」と声をかけると、壁側に追い詰められた。上半身を両手で何度も殴られ、首付近の神経を負傷。右腕がほとんど動かなくなり、何かに触れるだけで激痛が走るようになった。
暴力をきっかけに仕事を休み、19年に退職。施設の安全配慮義務違反を訴えて提訴し、施設側が数百万円を支払って和解した。男性は暴力を振るった直後に亡くなった。
今も右腕にしびれるような痛みが残り、重い物を持つことができない。家族に介助してもらいながら生活し、自宅近くの就労継続支援A型事業所に勤務し、左手を使ってパソコンの打ち込み作業を担当。収入は介護職時代に比べて約3割減。「今の私には、パソコンしかやれることがない」とうつむく。
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