https://news.infoseek.co.jp/article/shueisha_152712/?tpgnr=busi-econ

これは日本の現状を表すきわめてシンボリックなものであったと言わざるを得ません。

当初、企業側に積極的に働きかけた政府関係者は手応えを感じていたようでした。
4%強の物価上昇に対して賃金がパラレルに上昇していき、いずれ賃金上昇力のほうが上回る「好循環」をイメージしていたはずです。

ところが、賃金が物価を抜くどころか、まったくその兆候はなかった。
政府の期待、ひいては多くの国民の期待はいわば陽炎のようなものだった。
物価と実質賃金を差し引いた実質賃金はマイナス。それが紛れもない現実なのです。

そして、この実質賃金のマイナスが今回の本のタイトルにもなった「インフレ課税」の正体なのです。
インフレ課税とは、私たちの暮らしが物価上昇に食われて貧しくなることで、所得・資産の実質的価値が“目減り”することなのです。

「賃上げ追いつかず 消費に水」。
翌7日の日本経済新聞の第5面のあまり目立たぬところに、こんな見出しで厚生労働省発表の4月の毎月勤労統計についての記事が掲載されていました。

この1年間で実質賃金は約8万円減少

――業績の良い大手企業が思い切った賃上げを先行発表したことで、賃上げへの期待感は高かったものの、結果的に国民はおおいなる肩透かしを食らったということになりました。
この状況に今後、変化が生じるとお考えですか?

まだわかりません。ただ、役所の説明がふるっているのです。「5月以降を注目してください」って。
4月に賃金が上がらなかったから、5月以降に上がるかもしれないと言っているわけですが、これは欺瞞に満ちています。

公的年金生活の方には4月15日に2ヵ月分の年金が、68歳以上の方には1.9%増で振り込まれています。
ただ、これも物価上昇率より低い伸びなので、実質目減りとなります。しかし、公的資金受給者以上に、会社ワーカーの人たちは割り負けているのです。