林氏の思想的スタンスについては、林氏のコラムを読む限り、リベラルな立ち位置であるが、それは林氏に言わせると、「中途半端なもの」であるらしい。

「安倍さんとは、政治信条で相容れぬところはありました。『改憲』をはっきり口にするようになり、『桜を見る会』の問題や社会の経済格差が大きく拡がってしまった後始末は期待したとおりには進まなかった」(週刊文春・2022年7月13日「先月の食事会でかけられた言葉|林真理子」・証言「安倍晋三と私」特集)

「週刊文春の編集長だった、花田紀凱氏が作った『月刊Hanada』は、世の中の右っぽい空気に支持されて、とても好調のようである。時々読ませていただいているが、中途半端な私はよく『あれ』とか『そうかなあ』と思うことがある」(「『Hanada』や『WiLL』を読んだ後は、『週刊金曜日』とかを読んで中和するといいよ」週刊文春電子版・2022年9月23日)https://news.yahoo.co.jp/articles/0a1765e4c8db5a84937fdb6a3ca2a87964c4aa72

 また、政治信条では相容れぬ安倍元首相や、昭恵夫人とはよくでかける仲であったようだから、政治的な立場はリベラルにとりつつ、その点については強調しすぎないことで、交友関係を広げていったというところだろう。

「現在、お座敷が毎晩のようにかかる私がいます。有名人が集う楽しい会食の場にいるのは、そこにいる人が努力して勝ち獲った資格なんだ、と言いたい」(林真理子著『成熟スイッチ』)というから、読者も見習ったらいいのではないかと思う。テクニックは簡単だ。政府に批判的な姿勢を見せておきつつ、人柄については褒める、仕事の腕については褒める、これで世の中の大概の人とは仲良くなれる、特に有名人が集う楽しい会食とかに呼ばれるらしい。

 林氏は、日大内で女性を多く登用することにより、組織に透明性と多様性を生むことを目論んだのだという。「女性がいると議論が活発になります。みなさんのエネルギーはすさまじくて、会議に3、4時間かかってしまうこともざら」「今は連日、朝から晩まで会議がびっしりです。週に1度の執行部会に常務理事会、月に1度の理事会。合間を縫うように各種の委員会が開かれ、そのほとんどの議長が私です」という中で、「これまでの理事会は報告と承認のみの一方通行の場だったそうなので、今は雰囲気ががらりと変わった」( 文藝春秋 2023年1月号)という効果がでたのだという。週に5日、朝から理事長室に通っては会議をこなし、全国に広がる日大関連施設の視察などにも余念がなかったという。