東京電力福島第1原発処理水の海洋放出の24日開始が決まったことを受け、東電は22日、処理水放出の準備作業を始めた。処理水の海洋放出は今後本格化する廃炉作業の進展に不可欠なだけに、東電は風評対策や賠償に万全の体制で臨む方針だ。

地元漁業者らの懸念根強く

 「何よりも風評対策。もし対策にもかかわらず、損害が生じた場合には速やかに適切に賠償を行っていく」

 22日午前に首相官邸で開かれた関係閣僚会議に出席した後、東京電力ホールディングスの小早川智明社長は記者団に語った。その後、東電は海洋放出に向けた準備作業として、放出予定の処理水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度の測定などを始めた。

 2011年の福島第1原発事故後、東電は「福島への責任の貫徹」を掲げて廃炉や処理水のもととなる汚染水対策にあたってきた。

 東電は今回、処理水の海洋放出のための体制を強化すると発表。具体的には、放出のスタート段階で福島第1原発に副社長を常駐させて監督する。また、風評対策や賠償などの関係部署を横断的に統括し、迅速な情報把握などをする社長直轄のプロジェクトチームを設置する。さらに、処理水の海洋放出による風評被害で生じた賠償を専任とする担当役員も配置する方針だ。こうした体制強化を図るのは、地元漁業者らの風評被害への懸念が根強いためだ。

 風評被害の抑止や水産物の販路拡大などの対策は政府が計800億円の基金を設けるなどして前面に立って対応する。

https://mainichi.jp/articles/20230822/k00/00m/010/227000c