匿名化システム使うネット犯罪 立件の鍵は「聖地巡礼」で残した痕跡
2023年8月23日 7時00分

全国各地の学校などにインターネット経由で脅迫文をファクスで送ったとして、20代の男2人が警視庁に逮捕された。匿名化システムが使われ、捜査が「極めて困難」(捜査幹部)とされたネット犯罪。立件の鍵は現実世界に残されたある「痕跡」だった。

SNSの書き込みから浮かんだマンション
 端緒は今年3月に警視庁に寄せられた情報提供だった。ネット上の犯罪に詳しい人物が、ツイッター(現X)の特定のアカウントを指定し、「使っている人物が事件に関わっている可能性が高い」とする内容だった。

 警視庁がこのアカウントの投稿を調べたところ、脅迫ファクスが送信された直後の1月下旬、三重県のマンションを訪れたと思われる内容があった。そのマンションは、恒心教を名乗る人物らが特定の人物への嫌がらせで訪れることで知られていた。訪問は「聖地巡礼」と称された。

 警視庁はこのマンション近辺の防犯カメラを捜査。1人の男が訪問し、すぐに逃走する様子が映っていた。

 捜査員が防犯カメラの映像をたどるなどし、東京都小金井市にある東京農工大学の男子学生寮にたどり着いた。この寮に住む学生の1人が、佐藤直容疑者(22)だった。

 警視庁は、三重県のマンションへの邸宅侵入容疑で佐藤容疑者を6月1日に逮捕した。寮の部屋を家宅捜索し、パソコンやスマートフォンなどを押収。これらの解析で、佐藤容疑者と大熊翔容疑者(26)がSNSを使い、ファクス送信についてやり取りしていたことが判明した。警視庁は8月2日に大熊容疑者を、3日に佐藤容疑者を威力業務妨害容疑で逮捕した。
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