去年7月、岩手県奥州市の山林で車を転落させ、同乗していた50代の妻を殺害した疑いで承諾殺人の罪に問われた男の判決公判が23日に行われた。
被告人は65歳の男。検察側の懲役3年の求刑に対し、弁護側は起訴内容を認めたうえで減刑と執行猶予付きの判決を求めていた。
結審から1か月あまり。男の風貌は変わることなく、上下紺色のジャージーに身を包み、白髪交じりの短髪で法廷に現れ、長椅子に腰かけた。
午前11時30分、開廷。裁判官に促された男は証言台の前に歩を進めた。背筋を伸ばして、目の前の裁判官を向いた。
午前11時30分、開廷。裁判官に促された男は証言台の前に歩を進めた。背筋を伸ばして、目の前の裁判官を向いた。
「主文、被告を懲役3年に処する。この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する」男に有罪判決が言い渡された。
「借金の返済などで男が経済的に追い詰められ、当時55歳の妻に承諾を得たうえでともに心中する覚悟をし、去年7月9日に奥州市内の橋の袂から車を約19.6メートル下の山林内に転落させ、妻を殺害した」裁判官は検察が示した証拠を認定した。
裁判官は量刑の理由を淡々を述べた。「本件は、人の生命を軽んじることの甚だしい犯行ではあるが、被告は犯行当時、重症うつ病エピソードのために精神的な視野狭窄の状態に陥っており、心中以外のほかの解決方法を模索することが困難であるから、人命軽視の態度を厳しく非難することはできない」
裁判官は心神耗弱状態であることを認め、さらに被告の情状も考慮した。
「被告が今後は、うつ病の治療を受けながら、妻の供養をしていきたいと述べていることなどの事情を併せ考慮し、主文の通りの刑を量定した」
男は徐々にうつむき加減になりながら、静かに聞き入れた。最初は開いていた手の平は、小刻みな震えとともに小さく握りしめられていた。
手元の判決文を読み上げたあと、裁判官が男に語りかけた。「しっかりうつ病を治して奥さんを弔ってくださいね」男は小さくうなずいたあと、深く一礼をして法廷をあとにした。
https://news.yahoo.co.jp/articles/367ce3805437877ff55aa1e62aae41958ebe854a