中国の消費者「海鮮離れ」 習政権の処理水批判で

8/30(水) 19:09配信

【北京=三塚聖平】中国で、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出開始後、日本産だけでなく中国産の海産物も避ける動きが出ている。
中国政府が処理水放出による「食品安全の汚染リスク」を強調し続ける中、中国の消費者が海産物全体の安全性を警戒するようになっているためだ。
中国の水産業関係者は影響がどこまで広がるか懸念している。

【グラフィックで見る】日中韓のトリチウム年間排出量

「ここ数日で売上高、販売価格、来店客が全て減った。今後どうなるのかと、ここの販売店主はみんなが心配している」

北京市内の海鮮市場で魚を販売する女性店主は不安げに話した。この店は以前から日本産を含む輸入品は取り扱っていないが、
処理水放出が始まった24日から販売状況が悪化しているという。

中国の交流サイト(SNS)では「核海鮮」といった表現も使われており、漁師が「品質を保証する!」などと涙ながらに訴える動画も目立つ。
「日本の海洋放出への反対が『反海鮮』に変化している」という投稿もあった。
香港紙、明報(電子版)は「反日と放射線への懸念という強い感情は全ての海鮮にまで及んだ」と伝えた。

中国政府は24日、放出開始を受けて日本産水産物の輸入を全面的に停止。同措置について
「中国の消費者の健康を守り、輸入食品の安全を確保する」などと説明している。中国外務省報道官は
「日本は全世界に核汚染のリスクを転嫁した」と批判した。こうした中国当局の発信が、SNS上に広がる
「反日ムード」だけでなく、全ての海産物への警戒感も刺激する結果になったのだ。

中国メディアによると、沿海部の江蘇省当局は「正規ルートで購入した海産物は基本的に国の基準を満たしているので安心して食べることができる」として
消費者に過度の心配をしないよう呼び掛けている。

しかし、海鮮市場でエビなどを扱う販売店の女性店員は「来店客は『海産物を食べて本当に大丈夫か?』と聞いてくる。
今はまだマシなはずで今後どうなるのか…」と下を向く。中国のSNSなどでは、
処理水が「放出開始から240日後に中国沿海に到着」するといった真偽不明の情報が出回っており、水産業者は今後の風評被害の拡大に頭を悩ませている。

外務省の岡野正敬事務次官は28日、呉江浩駐日中国大使に
「処理水について科学的根拠に基づかない発信により人々の不安をいたずらに高めるべきではない」として正確な情報発信を強く求めている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/98fd9433f8d05da60aeebb8bb0036d645219d435