独立の英雄は共産主義者!


洪範図将軍の胸像撤去、歴史学者ら尹政権を批判「極右ユーチューバー水準の焚書坑儒」
2023-08-29 07:40

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2018年3月1日に陸軍士官学校で除幕した独立戦争英雄5人の胸像石碑。左側から洪範図将軍、池青天将軍、李会栄先生、李範?将軍、金佐鎮将軍

 韓国政府が陸軍士官学校の校内だけでなく、国防部庁舎前に設置された独立戦争の英雄である洪範図(ホン・ボムド)将軍(1868~1943)の胸像を
撤去する方針を明らかにしたなか、歴史学界からは尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が政治的な「勢力結集」のために独立運動史を全面否定し、
無理な歴史戦争を行っているという批判が出ている。

 歴史学者らは28日、洪範図将軍の「ソ連共産党加入」の経歴が「自由民主主義と大韓民国を守護する
『陸軍士官学校のアイデンティティ』に合わない」という主張は論理的説得力に欠けると口をそろえた。

 徳成女子大学のハン・サングォン名誉教授(史学科)は「自由民主主義国家の理念というものは、1945年の光復(日本による植民地支配からの解放)と
冷戦以降にできた概念であり、1920年代当時には存在しなかった概念をもって、当時の共産主義の経歴があるという理由だけで
現在の国家アイデンティティを否定するとみなすのは、論理的矛盾」だと述べた。洪将軍は1922年、モスクワで開かれた極東民族大会で、
当時のソ連の指導者レーニンから拳銃を贈られ、1927年にはソ連共産党に入党した。

 韓国の独立運動史に対する理解不足だとする指摘も出ている。当時、沿海州や満州などの地で海外での武装独立運動を行っていた独立活動家たちは、
理念ではなく「現地支援」の必要性から、ソ連共産党や中国共産党などに加入したりして活動した。民族問題研究所のパン・ハクチン企画室長は
「当時、国外で独立運動を行うには、その国の政治勢力と協力しなければならなかった。政府の論理に従うと、中国共産党や国民党と協力した
金九(キム・グ)も、大韓民国臨時政府の国務総理(首相)を務め建国勲章を受けたが韓人社会党を組織した李東輝(イ・ドンフィ)も、
国家アイデンティティに反するという理由で消さなければならないではないか」とし、「極右ユーチューバー水準の認識レベルであり、
陸軍士官学校版『焚書坑儒』のレベル」だと批判した。漢陽大学のパク・チャンスン名誉教授(史学科)は、「洪将軍が共産党に加入した理由は、
周りの高麗人たちが独立運動を行いながら沿海州で農作業までして困難な暮らしをしていた様子を見て、軍人恩給を得られるようにするためにも
入党を勧めたため」だとしたうえで、「洪将軍は、共産主義活動を行ったことによるのではなく、生活上の困難のために加入した」と説明した。

 歴史学界は、尹政権が政治的な勢力結集のために無理を強行したと評している。ある教授は「何らかの主張を行うためには、学問的根拠を
もとにしなければならない。だが、学界では誰も(尹政権の)そうした主張を代弁しないでいる」とし、「20~30%の支持層だけでも結集させようという
考えであり、歴史学界の定説まで否定する自滅行為だ」と評価した。独立活動家の池青天将軍の子孫である新興武官学校記念事業会のイ・ジュンシク共同代表は
「過去のどの保守政権でさえ決して試みなかった歴史戦争を、尹錫悦政権が行おうとしている。朴槿恵(パク・クネ)政権時には、国民世論の顔色を
うかがい説得しようと努力したが、尹政権は反対する人々は『反国家勢力』だというレッテルを張るだけだ」としたうえで、
「極右勢力を背景にする尹大統領が、今後、建国節の制定など『歴史分断』を続けるのではないかと心配だ」と述べた。