私は同センターの元従業員Aさんに話を聞いた。Aさんは昨年4月から7月まで非常勤職員として勤務。「自治体のセンターだからきちんとした酪農を学べるだろうと思って働き始めたら、あまりにも酷くて愕然としました」と振り返る。

茨城県畜産センター元従業員のAさんによる証言
同センター元従業員のAさんによると、牛への暴力は常態化していた。

「私がいた職場は2班に分かれていたが、どっちの班のリーダーも牛を蹴っていた。搾乳室に移動させる際、一刻も早く動かすために蹴る。ベッド(牛が休む床)に座っている牛には、『こうすればいいよ』と足を持って踏みつけるよう教えられました。竹棒で追い立てる人も。ちょっと待ってあげる人もいましたが、基本的には皆「いけいけ」と叩く。清掃道具の鉄の部分で背中や腹をたたく人もいた。ベッドにいる牛は、人が前に立つと立ち上がって後ずさりしてくれるのに、いきなり蹴るのです。

不衛生な床、固すぎる床、伸びすぎたひづめ、遺伝などの原因で足が痛くなり、動かない牛もいました。右後ろ足を痛めた乳牛がいて、うずくまって立てなかった。複数が尻尾を引っ張ったり、テーピングが巻かれている足を蹴ったり。牛はもだえるように体を動かしたけれど、どうしても立ち上がることができませんでした」

結局、その牛は建機で釣り上げられ別の場所まで運ばれ、ポータブル式の搾乳機で乳しぼりすることになったという。

―運動場や牛舎はどうしてふん尿だらけなのでしょうか?

「供卵牛(和牛の受精卵を採取するための雌牛)の牛舎と運動場で、ふん尿をかき出す掃除がちゃんとしていなかった。あちこちに便の水たまりができ、ハエがたかり、尻尾にはこびりついたふんが玉になっていました。

子牛の運動場にもふんがたまり、研究者から『皮膚病の子牛がいるから、土の入れ替えをしてください』と指示があったのに、現場の人たちはやらなかったです」

―搾乳用の乳牛がいるフリーストール(舎飼いで自由に動ける牛舎)も不衛生な理由は?

「ふん出しを朝1回しかしないので、翌朝は通路のコンクリート床がふん尿でべちゃべちゃになってしまう。床には敷料として、オガコ(木の削りくず)をまくのですが、ふん尿を吸収するには量が少な過ぎました。だから牛の腹から後ろ足にかけ、ふんがうろこのように付いていた。

私がオガコを少し多めにまいていると、班長らから『使い過ぎ』と注意されます。『オガコをまくと牛が喜ぶ』と言うと、『たくさんまきたいが予算がないのでできない』という返答でした」

眼をそむけたくなる乳牛が置かれている環境
―なぜ掃除が不十分なのですか? 仕事量が多過ぎる?

「1日8時間の労働時間の中で、昼休みに加え計3~4時間ぐらい休憩時間を取っていました。スマホを見たり、タバコを吸ったり、中には自分のバイクの手入れをしてる人も。ふん出しは余裕で1日2回できるのに、朝1回しかやらなかった」

―取られていた暑熱対策について

「昨年6月末になると、正午には外気温が40度まで上がりました。供卵牛は運動場で2時半まで過ごすことになっていましたが、その日は口から泡を噴き、『はあはあ』と苦しそうに息をしていた。私が屋内に早めに入れてやることはできないのかと同僚に聞くと、『中に入れると送風機代がかかる』と応じてもらえませんでした。その後、夕方4時からの夜間放牧に切り替え多少改善されました。ただし牛舎内は大型送風機が回っているだけで30度半ばまで上がり、快適な環境ではなかったです」

―麻酔なしの除角の実態について

「従業員が逃げ惑う子牛を捕まえ、床に倒して前足と後ろ足をそれぞれロープでくくりました。その上に4人が乗り、赤々と先端が燃える焼きごてで、これから角が生える部分に押しつけると、もうもうと煙が上がった。子牛は目を見開き口からよだれを出して、うめき、顔をそむけると、作用員が長靴で顔を踏み再度こてを20~30秒押し当てました。

その後ニッパーで角の根元部分を切り、再度焼く。それが終わると、もう片方の角も同じ処置が行われました。終わると、子牛は放心状態ですぐに立てない。すると、作業者が尻をけり、無理矢理立たせました」。従業員もこの酷さは分かっているようで、『残酷焼き』と呼んでいました」
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最後にAさんが強調したのは、乳牛がほぼ半日を過ごすベッドの状態だった。https://news.livedoor.com/article/detail/24955078/