ホーユー破綻→全国で給食中止が続出…値上げ拒否する学校・行政の責任、安値発注も

「給食は安くて当たり前」という国民の意識も問題

 給食・食堂事業者から委託元への値上げ要請は、受け入れられにくいという実態はあるのだろうか。一般社団法人 日本給食経営管理学会理事長の赤尾正氏はいう。

「給食事業者と委託元の契約期間は一般的に1年~複数年の期間を定めた契約になっており、値上げの相談をしても『次の契約更改のタイミングで検証』とされて契約期間途中での値上げは認められないケースが多い。従来であれば、次の契約更新を待つかたちでも事業者側は持ちこたえることができましたが、昨今の物価上昇は企業努力で吸収できる範囲を超えており、今回のようなケースにつながったと考えられます。

 物価上昇に加えて人手不足も深刻です。労働人口の減少に加え、コロナ禍による一部事業の停止・縮小などで離れたパート・アルバイト社員が、コロナが落ち着いて業績が回復し賃金が上昇基調にある飲食業界に流れ、戻ってきにくくなっており、従来より高い賃金を設定しなければ人手を確保できず、結果として経営を圧迫する要因になっています。突然の給食提供中止・食堂閉鎖が起きれば、委託元および給食の提供を受ける利用者にとっても大きな痛手となるため、委託元もそうした事業者側の事情を考慮して、柔軟な対応を検討すべき時期にきています」

 今回のような事例が起きないために、給食事業者側と委託元が取り組むべきことは何か。

「委託元は事業者の選定にあたり、その事業者が継続してサービス提供が可能かどうかを評価する仕組みを取り入れるべきです。また、契約のなかに、もし仮に事業者がサービスを提供できない事態となった場合に代わりに提供してくれる別の事業者を設定する『代行保証』の項目を盛り込むことも重要でしょう。

 一方、事業者は、体力のある大手が現在も行っているように、過度に安いなど不適切な金額での契約は行わない、サービスの質低下を伴う契約は辞退するということもときには必要です。また、原材料価格の高騰などが生じた場合には契約内容の見直しを行うといったことも、あらかじめ契約書に盛り込むよう委託元と調整すべきでしょう」(赤尾氏)

 ホーユー社長が指摘するような安値受注競争の実態はあるのか。

「とにかく安価な給食事業者を使いたいという発注者も少なくなく、そうすると経営基盤が脆弱な事業者が、人件費や原材料費を落としてでも金額を安くして受注するということが起きてしまいます。

 また、世間一般の人々の間には『外食に比べて給食は安いもの』という意識が定着しており、これが給食業界でなかなか値上げを実現できない背景にあると感じます。例えばランチが500円というのは安価に感じても、給食一食が同額であれば満足感を得にくい人は多いでしょう。これは給食業界全体の課題であり、第2・第3のホーユーを生まないためにも、今回の事案が国民の意識を変えるきっかけになればよいと思います」(同)

 外食チェーン関係者はいう。

「値上げに対し消費者から一定の理解を得つつある外食業界とは異なり、世間からも発注者である施設からも『安くて当たり前』という意識を持たれている給食事業というのは、かなり難しい面がある。くわえて、複数年契約のため自社の判断ですぐに値上げできないという特殊な事情もある。

 ホーユーに関していえば、発注元が急に連絡が取れなくなったり、一方的に食堂を閉鎖して、施設側から何度問い合わせを受けても『担当者不在』を理由に逃げ回ったりと、企業として明らかに問題があるのは事実。それとは別の話として、未曾有の物価・人件費上昇という給食事業者の置かれた窮状を無視して、頑なに値上げを拒否する行政や学校にも問題はある。事業者が破綻すれば回りまわって発注元も大きな不利益を被るわけで、しっかりと事業者の声に耳を傾けるべきだ」

https://biz-journal.jp/2023/09/post_359050.html