東京電力福島第1原発の処理水海洋放出で、中国による日本産水産物の全面禁輸で影響を受ける水産事業者を支援しようと、国内消費拡大を促す動きが広がっている。省庁や民間企業の食堂、大手外食の店舗で北海道や東北地方の水産物を使った特別メニューの提供が始まり、政府は学校給食でも同様の取り組みができるか検討に入った。最大輸出先の中国に代わる需要確保が困難なため、内需拡大で輸出消失分を補いたい考えだ。

農林水産省の一部食堂では11日から北海道産ホタテのフライ定食の提供が限定5食で始まった。価格は1270円と他のメニューに比べて割高だが、完売するなど好評を得ている。1週間限りの特別メニューだが「状況をみながら、継続提供も検討する」(水産庁加工流通課)という。

同様の動きは民間企業でもみられ、三井住友海上火災保険も同日から本社の社員食堂で三陸産イワシなど東北地方の水産物を使った特別料理を1週間限定で提供を始めた。外食大手ワタミでも、「ミライザカ」や「鳥メロ」などの居酒屋業態で国産ホタテなどを使った特別料理を販売するキャンペーンを20日までの期間限定で実施している。

政府が4日に示した水産支援策では、国内消費拡大に向けた「国民運動の展開」を掲げた。この方針に従い、今後は学校給食や農水省以外の各省庁の食堂に日本産水産物を活用したメニューを提供できるよう検討を進める。すでに防衛省は、全国の自衛隊基地や駐屯地の食堂などで、日本産水産物を積極的に使用するよう準備を始めた。

輸出停止の影響が大きい福島県や北海道の自治体では、ふるさと納税で返礼品に水産物を選ぶことによる漁業者支援も活発だ。処理水放出の開始日を決めた8月22日以降、福島県いわき市では、ふるさと納税による1日当たりの寄付件数が通常の10倍近く急増するなど支援は広がっている。

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