
Q 老害というお話もされていた。今後のアニメ製作のイメージは。
鈴木氏 経営をどなたかにやっていただきたいと、かねがね考えていた。どういう体制で作品を作るかも大きな問題だった。
なかなかぼくも現場で、いろいろやってみたのですが、ことごとく失敗に終わりましてね。宮崎に続く有望な監督を見つける、育成するその困難さを知った。
ひとつだけ言い訳をさせていただく。「君たちはどう生きるか」という映画をつくったが、客観的に作品をみると「これ大変だな」と思った。
同じものを要求されたら、今の若い人たち作れませんよね。それを強く感じました。
宮崎はいま、「君たちはどう生きるか」の興行成績をものすごく気にしている。かつてないくらいなんですよ。
もし、支持してくれる人がいるのなら、企画までは考えていいかなとか、非常に謙虚にいっている。今そういう心境であることだけは間違いない。
Q 後継者の問題があったが、宮崎監督がこれからも新しい才能、人材の育成をやっていきたいという思いをもって取り組む予定なのか、宮崎監督がまた新作を作るのか。構想は。
鈴木氏 作品というのは、宮崎や高畑がやる、作家を尊重してそれを中心に映画をつくる。そういうやり方がある。もうひとつは企画。企画とは、枠を決めちゃう。
ディズニーというところは、ウォルト・ディズニー亡きあと、やっぱりうまくいかなかった。あるとき、ある人が責任者になって、企画力があった。
3つの方針を決めた。1、古典をやろう。クラシックだと。ただしクラシックには必ず差別が入っている。それをどうオブラートに包むか。それが大きい。
2、主人公は女性である。これも決めた。それから3つめ、主題歌を大事にする。
この3つを決めてやり始めた結果、ディズニーは再生しました。残念ながらこの人のことすごく好きだったけど、飛行機事故で亡くなった。
だからさっき申した、企画でやるのか、あるいは作家の才能に頼るのか。ジブリはそれでいうと、やってきたつもり、宮崎や高畑は作家主義、そのほかの若い人は企画主義。基本的にはこれだとまだ思っている。
Q 「君たちはどう生きるか」を改めてみたときにこれは若い人には作れないんじゃないか、という話があった。
安定的な人件費の保障があれば若い人が作れるのか。今回の決断との関係は。
鈴木氏 本当のことを言うと、宮崎駿とぼくというのは、わがままだったんですよね。
自分勝手というか。2人は好き放題なことをやった。そういうことを言うと、人材の育成、その他に関してはさぼってきました。
ぼくが思うのは、ジブリは世界でも珍しい、映画しか作らない会社。その考え方を誰かがどこかで変える。
若い人材を育成するというのか、育つために必要なのはテレビシリーズ。
テレビシリーズで若い人に機会を与えて秀作を作ってもらう。
その中ででてきたのが高畑であり、宮崎だった。その意味で本物の経営者が必要。本物の。
宮崎駿だって高畑勲だって、ずいぶんテレビシリーズやっている。
ぼくらも彼らとやったのはある年齢に達してから。彼らは映画を作りたかった。
経営者の健全な野心があれば、諦めるのではなく可能だと思う。世界のアニメ会社はそういうことをやっている。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/278896/2