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現音室内オケピアニスト兼重稔宏さん会員作品を演奏!

現音事務局———7月12日にカワイで開催するチャリティコンサートで、バッハやクルタークと共に日本の現代作品を演奏されるそうですね。今回の企画趣旨やプログラムについてお話頂けますか?
兼重稔宏:今回の企画は一昨年、東京芸大の同級生の浜野与志男と二人で始めたもので今回は第3回目です。「現代の作曲家の作品を演奏すること」と「収益金を2008年に私が滞在したバングラデシュのNGO、PAPRIに収益金を寄附すること」を二本柱にして様々な表現の形を模索しています。今年はいわゆる「ピアノリサイタル」という形式を選びましたが、昨年は美術を専門とする方々と共に表現することができてとても愉しかったです。

プログラミングについてですが、まず、楽譜屋さんで多くの作曲家のバッハをモティーフとして書かれた作品が収められている楽譜(PIANO 2000)を見つけたところが始まりでした。「面白そうだなぁ」と思いその場で購入し、家でほとんどすべての曲を弾いてみたのですが、その中でも特に南先生と金子先生の作品が心に響きました。

その2曲を決めた後、この作品と一緒に演奏したいバッハの作品を考えているうちに自然とこの2曲の前奏曲とフーガ(平均律クラヴィーア曲集、一巻第22番と二巻第4番)が浮かび上がってきました。そして最後に以前から弾きたいと思っていた湯浅先生の作品を今回こそ弾こう!と。要するに今弾きたい曲を並べてみたわけです(笑)。いろいろな意見があると思いますが、今の私にとっては無意識的に決められたプログラムの方が、いろいろと考えて、ある意味観念的に決めたプログラムよりも流れが良い場合が多かったり、作品を通して今の自分自身について知ることができ、よりよい演奏に繋がるような気がします
———兼重さんは、2010年に日本現代音楽協会が結成した「JSCMユース・チェンバーオーケストラ」のメンバーでもあり、旗揚げ公演となった「室内オーケストラの新地平」で南、湯浅両会員の作品を演奏して頂きましたが、その時の印象は如何でしたか?
まず私の楽器がピアノということもあり、協奏曲以外ではオーケストラのなかに入って演奏した経験がなく、指揮者の先生方や共演者の皆さんにご迷惑をおかけしたなぁという思い出があります(苦笑)。そして現代音楽の中心で活躍なさっている方々と直接お話をし、一緒に演奏することができてたことはとても勉強になりました。

お二人の作品そのものについての印象は、言葉では言い表せないものが一番大きいと思います。ですが、とにかく両作品ともにとても好きな作品です。

本番の演奏中に感じたことを振り返ってお話させて頂くと、南先生の作品は一番自由な気持ちで演奏できたこと、湯浅先生の作品はなんだかこう「血が騒ぐ」感覚があったことをよく覚えています。とくに終曲は。



———今回の企画は、ピアノを学んでいる方やクラシック愛好家の方に、現代の新しい作品を聴いてもらえる良い機会だと思うのですが、なかなか聴衆に届きにくいと言われる現代の作品を演奏する際に、心がけていることはありますか?



うーん、これはどの時代の作品を演奏するにあたっても言えることだと思いますが、それぞれ作品の持つ固有のスタイルや語り口や美感、音の裏にある「何か」を読み取り正確に伝えたいと考えています。そしてそういったプロセスを経たあとは、なんというか、音から自由になって色々なものを開放することができたらいいな、と感じています。最終的には音に帰結するわけですし、うまく言葉にはしにくいのですが・・・。

まだまだ経験が浅いのでなんとも言えませんが、まず演奏者が「現代の作品」という先入観を取り払って真っ白な心で作品に触れた方が、最終的にはお客さんにも作品に内包された世界が伝わるのではないのかなぁと思っています。



———なるほど「先入観を取り払って真っ白な心で」ですね! それでは最後に、今後の活動予定や、実現させたいと思っている企画等があれば教えて頂けますか?
今後は伴奏や室内楽のリサイタルがいくつかあります。自主企画としてはまた来年このシリーズを実現させたいと考えています。

また、私自身が社会学を学んでいるということもあり、なんらかの形で社会にアプローチするような演奏会は一生続けていきたいと思っています