TOTO「ニオイ博士」 悪臭に勝る好奇心、成果は大ヒット商品に

温水洗浄便座のウォシュレットで知られる「TOTO」の総合研究所(神奈川県茅ケ崎市)で、30年余にわたり、トイレのにおいの原因を追い続けてきた人がいる。
社内で「ニオイ博士」と呼ばれる素材革新PJの山本政宏主席研究員(56)だ。日々どのようににおいに向き合い、悪臭をなくすため、どんな研究をしてきたのか。

大学で環境化学を専攻していた。その経験から入社後、水回りの汚れや臭気の化学分析を担当する仕事を希望した。

いろいろ調べるなか、トイレと密接な関わりがある悪臭の原因に興味が湧いた。当時の公衆トイレは今よりもずっと臭かったが、社内で誰もこの分野の研究をしておらず、「狙い目だ」という気持ちもあり、研究テーマに選んだ。

「においを嗅がせて」

入社1年目から、鉄道会社の駅長室を訪れ、駅のトイレに機器を設置して空気(ガス)を採取させてもらった。強烈なにおいで涙目になりながら、自らが小便器の下や周囲からにおいの元となる空気(ガス)を嗅いだりした。現場を大切にしたいという思いからだ。仕事を離れ、旅行に行っても空港、商業施設、滞在先のホテル……、そこにトイレがあれば便器のにおいを嗅ぎ、メモを取った。

何が原因でこんなに臭いのか、どの微生物が悪さをしているのか知りたいという好奇心が勝り、力が入った。

便器から発生する大便や尿由来のにおいは、含まれている成分が微生物の働きでアンモニアなどに変化することで発生する。研究し始めたころはこれまでの経験から、集めた空気(ガス)を専用の測定機器で分析し、悪臭の正体が分かれば、それを除去したり、臭くなる前に化学変化させたりすることで解決できると考えていた。

https://mainichi.jp/articles/20230923/k00/00m/020/157000c

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