PLCでケーブルだらけのLANにさようなら

https://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/0701/16/news120.html

昨年末、待望の実用化がスタートした電気線インターネット。コンセントを用いて、屋内にLANが構築できる仕組みをみてみよう。
2007年最初の「5分でわかるシリーズ」は、話題の技術「PLC」こと「高速電力線通信」を取り上げます。
年末の大掃除に、家庭・会社を問わずにあまりにもゴチャゴチャしたLANケーブルとハブを見て「何とかならないかな?」と感じた人も多いでしょう。そこでコンセントを使ってほかのマシンと通信ができるPLCは、とても気になる技術ではないでしょうか。
今回はPLCの概要と利点、その歴史と問題になっている点を見てみましょう。
1. PLCってどういう意味?
PLCとは「Power Line Communications」の頭文字を取ったものです。「Power Line」は電力線、「Communications」はいわゆる「コミュニケーション」という意味もありますが、「通信」「情報」という意味もあります。直訳すると「電力線通信」となりますね。実はほかにもいろいろな訳語があり、「電力線データ通信」「電力線搬送通信」といわれる場合もありますが、基本的には同じです。
現在発売されているPLCアダプタは理論上30Mbps以上の速度が出るので、厳密には「高速PLC」と「高速」と付けた方がより正確だという考え方もあるようですが、この記事内では「PLC」で統一をします。

●PLCで何ができるの?
PLCの利点は電気のコンセントを使って、データ通信ができることです。有線LANを使う場合はケーブルを引くためのスペースや手間が掛かりますし、無線LANだと電波が届かない場所やスピードの問題があります。が、PLCを使えば、理論上数、数百Mbpsの通信スピードが出るうえ、コンセントがある部屋・場所ならすぐに利用することができます。
PLCを利用するには専用の「PLCアダプタ」が必要です。PLCモデムは親機と子機があり、親機はインターネットの回線を取り込み、子機はPCや情報家電と接続しデータのやりとりをします。
●なぜ注目をされているのか
実はPLCの技術自体は、そんなに新しいものではありません。では、なぜ最近PLCがなぜこんなに話題になっているのでしょうか。実は2006年12月9日に松下電器産業からPLCモデムが発売されたからです。その経緯については3ページ目で解説していますが、まずPLCの技術的仕組みについて見てみましょう。
2. なぜ電力線を使ってデータ通信ができるの?
ここではPLCについての技術的な部分について解説します。そんなに難しい仕組みではないので、肩の力を抜いて読んでください。
PLCの仕組みを考えるときに、まず「なぜ電力線を使ってデータが送れるの? 感電しないの?」と素朴な疑問を持つことでしょう。筆者もそうです(笑)。不思議な技術に感じる「PLC」ですが、原理はとても単純です。
関東では50Hz・関西60Hzと電力には周波数があります。インターネット・LAN上で流れるデータも、周波数帯域を使って通信を行っています。ただ電力と違ってPLCでは4〜28MHzと、電力と違って非常に高い周波数を使っています。なぜ高い周波数を使っているかというと、より大きなデータをやりとりできるためです。
ではPLCがどのようにデータ通信をしているか見ていきましょう。まず電力線に流れる「電力の信号」(図3)に、パソコンのデータをやりとりする「データ通信の信号」(図4)を加わります。
データを載せた電力がビル・家の中にある電力線を駆け巡り、目的のPLCモデムがデータの周波数部分だけを抜き取ります(図6)。これで同じ電力線を使って電力とデータ通信が1本のケーブルで利用できます。
いかがでしょうか?ここで使われている周波数の変調を利用して情報を伝達する技術は、こうして見てみると単純な仕組みです。
ここで出てきた「4〜28MHzの周波数帯を使ってデータ通信をしている」ということを、頭の片隅に入れておいてくださいね。これはとても重要なキーワードです。
3. つなげなかったラストワンマイル
現在発売されているPLCは、家庭内LANがメインの利用方法となっていますが、PLCは当初別の目的で開発が考えられていました。「復活した技術」ともいわれるPLCの歴史について、ここでは紹介しましょう。
電力線を通じてデータを送受信するという考えは昔からありました。
例えば、電力線や無線を利用して、家庭内の機器をコントロールする「エコーネット(ECHONET)」という規格が、日本の電気メーカーや電力会社によって提唱されました。しかし500kHz以下の周波数帯を使うこの規格は、通信速度がたった9600bpsしか出ませんでした。家電の故障チェックや電源のオンオフなどの制御には利用可能ですが、大量のデータをやりとりするインターネット通信には向いていません。