60秒で淹れられる! 新しい紅茶のティーバッグに賛否両論

■紅茶の大手ブランドが「60秒で完璧な1杯を淹れられるティーバッグを開発」と発表した。
ティーカップの中で極めて英国的な嵐が舞い始めている。BBC(電子版)が報じた。

 PGティップスが開発した最新のブレンドは、素早く抽出することで「より風味豊かで爽やかな」紅茶を提供できるというもの。
せっかちな紅茶愛好家の欲求を満たすために開発されたという新商品には2年の月日と莫大なコストを費やしたと言うが、
専門家たちの意見は真っ二つに分かれている。

 ヨーロッパ特産茶協会のナイジェル・メリカン会長はBBCに
「2年と莫大なコスト? 私だったら今すぐ無料でやれる。マグカップの中でティーバッグをかき混ぜればいい」と語った。
そして「品質は急いでは得られない。高級茶の抽出も急ぐことはできない」と続けた。

 「完璧な1杯のための11のステップ」を考案したラフバラ大学のアンディ・ステープリー博士は
「スピードは重要。普段飲む紅茶は早く淹れたいもの」と言う。
UKティー&インフュージョンズ協会によれば、英国で毎日、1億杯の紅茶がステープリー博士スタイルで飲まれているという。
博士は「ルーズリーフ(茶葉)を4、5分かけて淹れる人もいる。紅茶の淹れ方は十人十色。ベストな方法を規定することは不可能だ」と話す。

 一方「英国紅茶の日」を主催するティーグループの代表ディアズ・アユブ氏は60秒紅茶に強く反対する1人。
「ティータイムは経験であり芸術だ。英国の歴史を振り返れば、紅茶の伝統的な技術と儀式を尊重すべき」と話す。
アユブ氏はティーポット、ティーカップ、ティーストレーナー(茶こし)、そして既に省略された作法に戻ることを望んでいる。
PGGティップスの新しいティーバッグに関しては「ティータイムに対する侮辱だ」と語る。

 英国ルーズリーフティーカンパニーの代表ジョージ・バトリン氏も
「我々の楽しみは1杯の本格的な紅茶を用意するのに3、4分じっくりと時間をかけ、紅茶が与えてくれる穏やかなエッセンスを味わうことにある。
多くの人にとって忙しい1日の中、紅茶を淹れるゆっくりとした時間は魔法のような間奏曲を生み出すのだ」と話す。

 紅茶愛好家たちが淹れ方で盛り上がる中、つい先月も「英国民が一番好む飲み物はコーヒー」という報道があったばかり。
淹れ方で揉めるより紅茶離れを食い止める方が先かもね。

By 週刊ジャーニー (Japan Journals Ltd London)

https://www.japanjournals.com/uk-today/18342-230926-1.html