米アップルの牙城である日本のスマートフォン市場で、米アルファベット傘下のグーグルが展開するブランド「ピクセル」がシェアを奪い始めている。アップルの「iPhone」とピクセルの端末の機能差が縮まったこともあり、消費者の選択肢も変わりつつあるようだ。

  カウンターポイント・リサーチによると、ピクセルの日本での販売シェアは4−6月期に過去最高の12%となり、前年同期の6倍になった。逆にiPhoneのシェアは前年同期の58%から46%へと低下した。過去2年で初めて50%を割り込んだ。

  日本は世界第3位の経済大国であり、携帯ソフトやゲームの巨大市場でもあるため、彼らにとっていかに重要かは言うまでもない。

  アップルは円相場の急落を受けて日本でいち早くiPhoneの値上げに踏み切ったが、最新機種には絶対にほしいと思うような新機能が備わっておらず、高価格が災いして消費者を引き留められなくなってきている。

  韓国ソウルに拠点のあるカウンターポイントのアナリスト、トム・カン氏はインタビューで、「日本のユーザーはより現実的になってきた」と語った。「ソニーグループやその他ブランドも多少伸びているが、グーグルの伸びが最も驚くべきものだ」という。

  ピクセルの伸長の背景には思いがけない円安効果もある。同端末は限られた国でしか販売されておらず、海外在住者が日本で購入する場合もあるという。日本以外の購入者にしてみれば、30年超ぶりとなる円安によって、日本はピクセルを最も安く購入できる国となっているのだ。

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カン氏は、「日本がピクセルの積み替えハブになりつつある。iPhoneが円安に苦しむ半面、グーグルはその恩恵を受けている」と話した。

  世界最大級のスマホ市場で円安の果たす役割は大きいが、この傾向が続くかどうかは不透明感も拭えない。だが、消費者の間では価格感応度が高まってきているだけに、当面は日本でのiPhone販売は厳しい。顧客つなぎとめのために大手携帯各社が利用してきた販売時の奨励金は見直され、多くの消費者は携帯端末を独立した販売チャンネルで購入するようになっている。

  米テキサスの調査会社ムーア・インサイト・アンド・ストラテジーで主席モバイルアナリストを務めるアンシェル・サグ氏は、「グーグルやピクセルの担当チームにとって日本は大成功だ。貢献しているのは値段の安い6aや7aシリーズだろうが、この成功はグーグルがスマホ市場の中間層をうまく取り込んだことを意味しそうだ」と話した。

  日本におけるアップルの販売低迷は、同社の今後の課題を浮き彫りにする。同社は3四半期連続で減収となったが、需要低迷による業界の不振もあり、7−9月期も改善は見込んでいない。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-28/S1ONIUDWLU6801