新型コロナウイルスの影響で運休していた静岡空港の中国・上海線が24日、運航を再開する。訪日旅行需要の本格回復を期待し、静岡県内の観光・宿泊事業者が中国人客の受け入れ態勢を整えている。
3年7カ月ぶりの定期便再開で、中国からの団体客が各地を訪れることが期待される一方、8月下旬に始まった東京電力福島第1原発の処理水放出による対日感情の悪化から予約がキャンセルされる事例も見られる。
関係事業者は中国の動向に気をもみながら、集客策を練る。

茶文化発信施設「玉露の里」(藤枝市)では、中国政府が停止していた日本への団体旅行を解禁した8月から茶室での茶道体験目当ての中国人客が増え始めた。
静岡発着の上海線再開も決まり、コロナ前に客数全体の約4割を占めた主要顧客のさらなる来館増を当て込んでいたが、処理水放出で一変。中国の旅行会社から予約取り消しの連絡が続き、
10月末までの関連予約13件のうち11件計約220人の入館予定が失われた。

出はなをくじかれながらも、茶の入れ方を中国語などで説明する掲示物や翻訳機器をそろえるなど、引き続き中国人客の接遇力向上に取り組んでいる。
施設を管理運営する静鉄リテイリング(静岡市葵区)の担当者は「茶室の雰囲気や食事など、体験した良い思い出を持ち帰ってもらい、評判を広げてほしい」と話す。

浜松市内のホテルには8月下旬以降、中国の旅行会社から「客が集まらない」と、ツアーの中止連絡が入り、約60組のうち10組200人超の宿泊が白紙に。
マレーシアの旅行会社からも集客に苦戦しているとの情報があり、悪い風評の広がりを実感する。

外国人利用客の多くはアメリカ人などで営業面に大きな支障はないというが、担当者は「中国人団体客で稼働率の上振れに期待していただけに残念。処理水の影響が長引かなければいいが」と語った。
顧客の大半を中国に頼り、大きな打撃を受けた企業もある。藤枝市の旅行会社「ワールドフォース」はコロナ前、顧客の8割を中国人団体客が占めていた。
見積もりの依頼が徐々に増え、業績回復の兆しが見えていたが、8月下旬以降に中国の行政や企業の視察旅行などの予約が全てキャンセルとなり、コロナ禍の3年半と変わらない状況が続く格好となった。
加藤広司統括事業本部長は「中国の拒否反応が長く続くとは考えにくい。官民が連携し、長期的な目線で対外的な売り込みを続けることが重要だ」と強調する。

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