――逆に日本の生活で一番心温まったエピソードを教えてください。

「心が温くなるような瞬間はたくさんありますが、中でも特に印象に残っているのは終電に間に合わなかったときのことです。
その場所から私の家までは少し距離があり、そのとき、持ち合わせている現金は1万円だけでした。私は帰れるかどうか心配で、タクシーに乗る前に運転手さんに『1万円で家まで帰れますか』とたずねると、見積もりは1万5000円近くでした。それでも、その人は私を車に乗せてくれたのです。
そして、私は家の前に着いてその1万円札を渡そうとしましたが、彼は『大丈夫だから』と言って、受け取ろうとしませんでした。
きっと、当時の私があまりお金を持っていないことを心配してくれたのだと思います。このことは本当に忘れられません」