過度な円安が、政府の防衛力整備計画に影を落としている。令和9年度までの5年間の防衛費の総額約43兆円は、必要な装備品を積み上げて算出したものだ。装備品の単価が上がったことで、計画数量を調達できなければ、5年以内の防衛力の抜本的強化という目標を損ないかねない。

為替の影響を受ける装備品は6年度予算の概算要求で1兆5433億円(歳出ベース)に上る。装備品の調達や維持整備など物件費の約28%を占めている。

現在の円相場は1ドル=150円前後で推移しており、6~9年度の4年間で設定している同108円とは開きが大きい。円高に振れる気配はなく、防衛省幹部は「全体額は閣議決定されている。このままでは装備品の数量が抑制されてしまう」と危機感を示す。

防衛費の扱いが従来の「実質額」から「名目額」に変更されたことも大きい。平成30年策定の中期防衛力整備計画までは、為替変動や物価上昇は計画額の枠外だった。しかし、今回の整備計画では為替変動なども含めて43兆円の枠内に収めるよう仕組みが変わった。 政府は防衛費増額の財源確保のため増税方針を示している。国民負担を求める上で「額が上下するようでは説明がつかない」(政府関係者)というのが理由だが、防衛費抑制の思惑も透ける。

木原稔防衛相は「定められた金額の範囲内で必要な防衛力を強化していくことが重要だ」と説明。長期契約など合理化で年間2千億円程度の実質的な財源確保を図る。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、金額ありきではなく、必要な防衛力を整備するための取り組みが求められる。(小沢慶太)

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