・人類の歴史は信用創造の歴史である。
・行動することで直ぐに報酬が得られる狩猟採集に比べて農耕は開拓から種まきを経て収穫するまで時間がかかり
リソースの投入からリターンまでのリードタイムが長い。その間人々は報酬を得ることを信用して行動する。
・これがユヴァル・ノア・ハラリのいう虚構でありこれは信用とも言い換えられる。
・人類はお互い信用することでより分業化や集団化で生産性を向上させ大きな財やサービスを生産することができるようになった。
・貨幣の発明はそれをさらに増大させる。物々交換の手間に比べて貨幣を間接的に用いることで財やサービスの需要側と供給側を効率的に結合させさらに生産性を向上させることができた。
・また、貨幣を通じて貸し借りすることで、現物の存在を超えてさらに需要供給を加速化させることができた。
・だが、中世になり貨幣や土地を含む富を独占するものが発生し封建時代になると文明の発達は停滞する。
・人口の大部分を占める大衆は財やサービスを消費しようとしても交換する富を持たず、過少需要、供給過多となる。
・それ故労働力の需要も下がることにより単価が低下し奴隷化するために、生産性を向上させるための設備やプロセスの改善のための投資を行うより奴隷を安く雇用したほうが効率が良くなり科学技術の発達は停滞する。
・大衆はしばしば富を独占する王や貴族に対し、その不満を集めた指導者の下反乱を起こすが、指導者は勝利ののちに同じように王や貴族として君臨する。
・但しこの反乱や戦争によって偏在する富は再分配され、さらに戦争遂行により富やサービスが過大消費されることで需要が増大し、これにより生産性向上のための科学技術発達は促進される。
・安定した封建主義国家を構成したローマ帝国、中華清朝、李氏朝鮮、日本江戸徳川後期には科学技術発展が停滞し人口増加も抑制されやがて外国により滅ぼされた。
・近代になり資本主義が発明され、産業革命がおこると戦争、革命による需要過多期(インフレ)とその後に現れる供給過多期(デフレ)を繰り返すようになる。
・戦争期には大きな資金需要が発生し銀行による信用創造により市場に供給され実投資が行われ
多くの設備投資と実生産がおこなわれる。またこれらは戦争による過剰消費により十分なリターンを発生させる
・資本家は十分な富を蓄えるが戦争が終了すると需要は失われ供給過多となり投資先を失った資金は株式市場や不動産、ひどい場合にはチューリップの球根など本来の価値とは乖離したバブルを引き起こしいずれはじける。
・資金不足となる国家は大衆や資本家から実際に税金を集めるか、インフレ税として同様の意味を持つ債券(通貨)を発行し資金を補おうとする。大衆は不満から国家を打倒しようとする社会主義革命をロシアで起こし、不満を外部にそらす全体主義としてナチスやファシストが結成され、権益を強化するためさらなる侵略や戦争を行い帝国主義が発展する。
・これらの需要過多期と供給過多期のサイクルは大恐慌を経て帝国主義、全体主義、社会主義の各陣営を作り出し、やがて第二次世界大戦を引き起こす。
・第二次大戦ではアジア、ヨーロッパを中心とした戦闘による純粋消費による需要過多、一方でインフラや生産設備の破壊による供給力縮小が起こる。これに対応するため生産性向上のインセンティブは大幅に向上し、科学技術は飛躍的に発展する。
・一方、国家はこれに対応するための資金需要を債券発行により賄おうとしたため貨幣価値は大幅に棄損されインフレが増大する。
・ヨーロッパやアジアで戦後に破壊されたインフラや供給能力は戦時に発展した科学技術、及び戦争により破壊されることのなかったアメリカの供給能力を利用し急速に回復していく。