<独自>万博リング建設、最新技術で増員頼らず 3Dで現場再現、図面オンライン共有、顔認証
2025年大阪・関西万博のシンボルとなる大屋根(リング)の建設で導入されている最新技術の概要が24日、明らかになった。伝統工法を用いつつITをフル活用して生産性を向上させる。残業規制強化で人手が不足する「2024年問題」も懸念される中、増員に頼らず作業員の労働環境を守りながらスムーズに工事を進め、令和7年4月の万博開幕に間に合わせる。
概要が明らかになったのは、ゼネコン大手の大林組などが手掛ける「北東工区」の最新技術。同工区のリングは現在、約4割程度が完成しており、関係者によると「予定通りで、順調だ」という。
多くのパビリオンを取り囲むように設置されるリングは内径約615メートル、1周約2キロメートルあり、完成すれば世界最大規模の木造建築物となる。リングの建設は、会場の3つの工区整備を3つの企業連合がそれぞれ担当。大林組を中心とした企業連合は、来年7月ごろの本体部分の完成を目指している。
大林組は、現場の状況を「デジタルツイン」と呼ばれる技術で3次元(3D)映像で再現しチェックできるシステムを投入。関係企業などと最新の図面をオンラインで共有し、工事の進捗を管理しあえるシステムも導入した。
作業員らの入退場をスムーズにするため、建設現場の入り口では顔認証管理を導入。工事車両についても事前に入場予定情報などを登録し、車両の集中による混雑などを防ぐ。
一方でリングの建設には、木と木をつなぎ合わせて建造する日本の伝統的な「貫(ぬき)工法」が採用されていて、人の手による緻密な作業が進められている。日本の神社仏閣などの建築に使用される技術で、各工区ごとに異なる貫工法が使われている。
リングは、ケーキを切り分けたようなブロック状の部分ごとに建設。各ブロックは上部と下部を分けて製作し、それを結合する。
結合には、9本の木の柱を上下から接合する必要があるが「わずかなずれでも完成しない」(担当者)。このような建設作業には、特殊なデジタル技術が活用されるわけではなく、「地道で、着実な作業」(同)が必要とされる。
リング内側にはパビリオンが建設される。この建設工事が本格化すれば、多くの作業員や車両がリングを横切る形で移動する。そのため、ブロック間に仮設道路を設置し、一方でブロックの建設工程をコントロールすして、パビリオン建設に支障をきたさないようにする計画だ。
大林組の工区でリングの建設に携わる作業員は大工や測量士、金属工など関係会社の社員を中心とした約80人。作業の進展により交代があっても、人数は大きく変化することはないという。
作業員の勤務は朝8時の朝礼に始まり、17時に終了、土日は休みだ。今後も、そのリズムは変えずに作業員の労働環境を守り、確実に作業を進展させる。
https://www.sankei.com/article/20231125-5ZVSRFUI4NLQ7AOS2VWZ4MGEGE/