「こいつの仲間が私の尻、触っていったんだよ。捕まえてよ」

 警察官は彼女たちをなだめつつ、男性グループにも話を聞いている。聴取は5分ほどで終わり、警察官は彼女に何かを言って立ち去り、男性たちもどこかへと消えた。騒ぎを遠巻きに見ていた人たちもいなくなると、女の子だけがその場に残っていた。

 私は彼女を知っていた。いつも公園の周りの同じ場所に立っていて、何度か話しかけたことがある。人をあまり寄せつけない雰囲気があり、自分のことは話したがらない子だった。この日はトラブルの直後で気持ちが高ぶっていたせいか、「大変だったね」と声をかけると、大きなため息とともにこう言った。

「最悪だよ。たまにいるんだよ、ああいうクソおやじ。酔っ払って何してもいいと思ってんだろうね。むかつくし、これについては向こうが100%悪いから、警察に来てもらってよかったけど、警官には「互いの言い分が違って確認が取れない」って言われただけだった」

 もう何年も路上に立ち続け、何度も似たような経験をしてきたという。彼女から通行人にちょっかいを出すことはないが、酷い目にあっても泣き寝入りだ。

「うちらは基本、警察と絡めないじゃん? 別に「友達と待ち合わせです」って言えばいいけど、向こうだって、うちらが何してるかは分かってるわけだし。その場で変なやつを追っ払ってくれることはあるけど、ちゃんと捜査しようとはしないよ」

 そう言って彼女が向けた指の先には、防犯カメラがあった。「あれ見りゃいいじゃん。そうしたら、さっきのも、どっちが正しいか分かるのに」

 売春のために客を待つということ自体が法に触れる。彼女たちにとってはそれが弱みとなり、危ない目に遭うことも多い。

https://news.yahoo.co.jp/articles/352de6bf3d75b109806ff3ed0ff7a9377224f269