アイドルグループ「TOKIO」の元メンバー、山口達也さん(51)が、アルコール依存症について語る講演会が名古屋市内であった。バラエティー番組などで華々しく活躍する一方、自宅で毎日酒を飲み続けていた過去を振り返った。

 「私はアルコール依存症者です」。冒頭、こう切り出した山口さん。22歳でCDデビューしてから、30代まで毎日のように飲み歩いた。「世界が広がって友達も増え、『飲みに行く?』があいさつだった」

 お酒の飲み方が変わったのは40歳になったころ。当時は朝の生放送番組の司会をし、バラエティー番組の収録で全国を飛び回る「人生で一番エネルギッシュ」な日々を送っていた。

友人との時間を楽しむツールだったお酒が、いつしか「酔っ払うため」のものになっていた。「明日も忙しいし、適当に飲んで寝よう」。そんな感覚で自宅で大量に飲酒するようになった。そのころは2~3時間しか眠れず、睡眠障害を発症していたという。

 「睡眠導入剤と一緒に酒を飲んでいた。仕事もできていたし、異常な飲み方だと気付いていなかった」

 2018年に飲酒中の強制わいせつ容疑で書類送検(起訴猶予)され、所属事務所を退所。その後はアルバイトをしながら一人で断酒していたが、「すごく苦しく、孤独」だった。

 20年のある夜、我慢していたはずの酒を飲んでしまった。翌朝、記憶のない中でバイクに乗り、事故を起こして逮捕された。

「俺は一体どうなってしまったのか。初めて怖くなり、心の底からお酒をやめさせてくれ、助けてくれ、と病院に行きました」

 向かった先は、アルコール依存症の専門病院。自助グループと出合い、当事者の仲間らと語り合う中で、自分とも向き合えるようになったという。「あれだけ忙しかったのに、『この仕事、自分でいいのかな』『あいつの方がおもしろい』と、他人と比べていた」。不安ばかりを募らせ、自分を受け入れていなかったことに気付かされた。

 今年3月に会社を立ち上げ、各地で講演を行う。「この病気と一生付き合っていくことに決めました。経験を人に話すことが、自分にとっての治療になっている」。そう言って、穏やかな笑みを浮かべた。

 11月下旬に行われた講演会は、依存症への理解を深めてもらおうと、名古屋市精神保健福祉センターが主催。参加の申し込みは受け付け開始から1時間弱で320人の定員に達し、関心の高さをうかがわせた。同センターのユーチューブチャンネルで近く、山口さんの講演後の感想やメッセージなどが公開される。

https://mainichi.jp/articles/20231201/k00/00m/040/001000c
https://i.imgur.com/1avsaZK.jpg