
従来は、沸騰温度の違いや凍結温度の違いを利用していたが、普通の水(軽水)とトリチウ ム水はほぼ同じ性質を持っているため、その分離は非常に効率が悪く、装置も大掛かりで高価であるため実用的ではないとして、薄めて海洋放出することが決定された経緯がある。
矢部名誉教授の方法は、風呂などの湯気で馴染みのある蒸気を利用するものであり、沸騰とは異なる。水の沸騰は100度で起きるが、風呂の蒸気は40度程度という沸騰温度よりもはるかに低い温度で発生する。この蒸発をはやめるために、プロペラを用いて水を微細化する方法、エネルギー効率を高める方法など、日本、米国、中国で特許を取得している。高温の蒸気は、冬場の窓での結露と同じ原理で、低温に接することで液体化し、蒸留水となる。空気中の水蒸気の量を詞節すれば、トリチウム水と軽水とで異なる非平衡状態を作り、異なる結露を引き起こすことにより、トリチウム水と軽水を分離することができることを示した。
今回の装置は、矢部名誉教授が2006年に発表した「マグネシウム循環社会」のために、海水からマグネシウムを取るために開発されたものである。電解法で海水から取る方法は、高価でエネルギーコストが高すぎ、膜を使う逆浸透膜法は膜を洗い流す必要があり、マグネシウム回収ができない。このため、膜を使用しない全く新しい仕組みを作ったのだが、 この方法が放射性物質の除去に使えるのではないかと考えた。
https://zaikei.co.jp/releases/2287152/