人手不足への対応や人件費の削減でじわじわと増える無人店舗や無人駅。しかし万引きや不正乗車など利用者のモラルは低下気味だ。性悪説を前提に、技術や罰則などで厳しく対応するしかない。

1日平均270枚の初乗り切符が“行方不明”――。JR九州の小倉駅(北九州市)で発売される170円区間の初乗り切符は1日300枚にのぼるが、対象となる隣駅の西小倉駅(同)で回収されているのは、その1割の30枚にすぎないという。残りの切符はどこへ消えたのか。恐らく「キセル」すなわち不正乗車に使われていると見られる。

業を煮やしたJR九州は実力行使に出た。7月下旬から8月上旬にかけて、初乗り切符を券売機では買えなくしたのだ。どうしても必要な場合は、みどりの窓口で対面で買い求めなければならない。するとどうなったか。170円区間の切符の売れ行きは1日平均39枚と激減し、西小倉駅で回収される枚数は同18枚になった。回収率は上がったことになる。

一方で、170円区間の次に安い210円区間の切符の売れ行きが急増した。同期間の販売枚数は1日平均476枚で、それまでより100枚以上も増えたという。結局のところ、不正乗車とのいたちごっこということが明らかになった。

キセルという俗称が定着しているように、乗車する区間の一部しか運賃を支払わない不正乗車は、古くからの問題。しかし小倉駅で多発する背景には、新型コロナウイルス禍などを背景とする経営合理化で、無人駅が増えていることもある。2023年3月には、北九州市内の小森江駅(鹿児島本線)、志井公園駅(日田彦山線)が終日無人化。JR九州の駅の約6割が無人駅で、加えて駅員が一部の時間しかいない駅も多い。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00096/103100154/