
『あの子もトランスジェンダーになった』発売中止騒動を考える:ロマン優光連載269
発売中止になったのは上記の抗議運動によるものと考える人は多いが、ジェンダー問題に関心がある層がSNS上で反応したり、
国内外の出版関係者24名の賛同コメントが付与された「トランスジェンダー差別助長につながる
書籍刊行に関しての意見書」が提出されてはいるものの、さほど広がりを見せていたわけでもない。
ある種の固定的なメンバーによる、よくある程度の小規模なものだと思う。
取次や大手書店を巻き込むような抗議運動に発展したわけでもなく、メディアで大きく取り上げられたりもしていなく、
国会で取り上げられて問題視されたわけでもない。
発売の告知から間もなく中止が決まったため、続ければどこまで抗議運動広がったのかはわからないが、
中止が告知された時点の抗議の盛り上がりは発売の中止を決めるほどのレベルとも思えない。
無視しようとすれば無視できただろう。
今回の件、あの程度の抗議では普通は発売するだろうし、告知から発売中止の期間が短すぎる。
そう考えると今回の発売中止の主な原因は外部からの抗議にあるというより、
KADOKAWAの内部の都合にあったのではないだろうか。
また、竹内久美子氏やナザレンコ・アンドリー氏、百田尚樹氏、三枝玄太郎氏といった反LGBTQの傾向が見られる人物、
日本の宗教右派の思想と親和性の高い人物に本書のゲラを送っている。
ナザレンコ氏や三枝氏のポストを信じるなら、妨害が予想されるので応援してほしい、
というメッセージがあったという。抗議は想定内であり、抗議されたところで出版を
取り止める気はなかったということではないだろうか。内部の都合による中止という線はさらに濃くなった。
https://bunkaonline.jp/archives/3197