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2人で正月過ごすはずが…優しい弟はどこに 泥だらけの捜索見守る兄

能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市市ノ瀬町。集落では、あちこちに消防車や警察車両が停車し、まだ見つかっていない住民の捜索が続けられている。

【写真】行方不明になっている垣地英次さんの捜索現場から見つかった写真を持ち帰る兄の弘明さん=2024年1月27日午後3時43分、石川県輪島市、関田航撮影

 27日、兵庫県から派遣された警察官や消防隊員ら200人以上が泥だらけになって捜していたのは、瓦屋根職人だった垣地英次(ひでつぐ)さん(56)。夕方、兄の弘明さん(58)が現場を訪れ、消防隊員らから、見つかった写真やアルバムを受け取っていた。

 弘明さんによると、英次さんは、昨年11月に母親がガンで亡くなった後、弘明さんも育った実家に1人で住んでいた。今年の正月は、弟の元を訪れて、2人で過ごす予定だったという。

 地震が起きた時、弘明さんは車で英次さんの元に向かっていた。激しい揺れで道路が崩れ、近くの避難所で一夜を明かした。英次さんとは連絡が取れなかった。

 3日に初めて被災した実家の状況を目の当たりにした。英次さんの名前を呼び続けたが、返事はなかった。

 「優しい弟で、集落の人からも頼りにされていたようです」と弘明さんは振り返る。

 英次さんは約25年前、父親が亡くなり1人になった母親を支えたいと、金沢市での仕事を辞めて実家に戻った。輪島高校時代は野球部主将だったといい、弘明さんとはスポーツの話に花を咲かせることが多かった。「正月に、一緒に駅伝を見ようって話をしていたのに」と悔やむ。

 捜索の状況を聞いた弘明さんは、消防隊員に深々と頭を下げた。「弟ひとりのために、こんなに多くの人たちが捜してくれて、本当にありがたい。一刻も早く見つかってほしい」