能登半島地震では、地域経済を支える存在でもある多くの外国人技能実習生が被災した。職場再開のめどが立たず、実習生らは母国の家族を思いながら不安な日々を過ごしている。
「私の国にはまだ12歳の妹がいて、仕送りが必要なの」。ミャンマーから来日した女性(25)は、困り果てた表情を見せた。元日の地震で被災して、同胞の実習生ら約10人と一緒に石川県七尾市の小学校に避難した。

高齢化が進む能登半島では、漁業などの担い手として多くの実習生を受け入れている。県によると、県内には技能実習生4139人(2022年末現在)がいて、能登地方の5市7町で、その約3割が働いている。
22年に来日した女性も、七尾市のスーパーの精肉部門で働いていた。

女性や実習生仲間によると、元日は休みで、実習生の多くが寮で過ごしていた。立っていられないような大きな揺れに見舞われ、寮を飛び出した。
どうしていいか分からず立ち尽くしていたところ、近所の人たちの慌てた様子が目に入った。理由を尋ねると「津波が来る。逃げて」との返事。必死に高台へ走った。

職場は全壊を免れたが、断水が続くため、再開の見通しはない。女性らはやむなく、金沢市のホテルに2次避難した。
女性は「家族へ仕送りするために日本に来ているのに、これからどうなってしまうのか」と不安を隠せない。

一定の条件を満たせば、実習生が一時的にアルバイトをすることが可能になるなど、当座をしのぐための支援制度は整いつつある。
ただ、女性らの受け入れを担う監理団体の担当者は「本来の目的である実習を継続するため、受け入れ先の事業所が営業を再開できるようインフラの復旧を急いでほしい」と訴える。

監理団体を指導監督する外国人技能実習機構(東京都)は11日、被災した実習生への対応方針を発表した。地震で実習先の操業が困難になった場合などに、就業先の変更などを支援していくという。
県内で外国人支援を続けるNPO法人「YOU―I(ユーアイ)」代表、山田和夫さん(56)は「実習生の多くは日本語ができずに情報から孤立している。
当面の落ち着き先が決まっても、仕事がなければ生活ができない。早急に彼らが収入を得られる手立てを考えてあげてほしい」と話した。

https://mainichi.jp/articles/20240119/k00/00m/040/343000c