岡部隆浩さん(仮名・46歳)は、都内のコンビニで勤続10年目だが、ずっと最低時給で雇用されている。

「今の時給は1120円、深夜割り増しが入って1400円なので東京都の最低賃金ほぼぴったり。月に20日ほど働いても月収は16万円程度。
有休をもらったことはありませんし、健康診断もなく高校生のときに受けたきりです」

コンビニのバイトは接客から品出し在庫管理などマルチタスクが求められ、人によっては難易度の高い仕事だ。

「実際、一緒に働く外国人留学生は優秀なコばかり。彼らの多くは学校を卒業したら、日本の大手企業で正社員採用されバイトを辞めていきます。
きっと僕の倍以上の収入があるんでしょうね……」

そんななか、岡部さんはなぜ同じ職場に勤め続けるのか。

「以前はパワハラが横行する工場でバイトしていたので、それに比べればまだマシ。今の状況に文句はありませんね」

岡部さんは高校卒業後に入社した工場バイトでパワハラに遭い、引きこもりに。
その後、コンビニバイトを転々とし、現在の店は勤続10年目だ。多くを望まないのは、ブラックな環境に慣れたせいか。

「各都道府県で実施している就職氷河期世代向けの就職支援などを諦めずに活用する方法もある」と語るのは労働経済ジャーナリストの小林美希氏。

「中小零細企業のなかには、未経験の中高年層でも働きやすい家族的な企業文化の会社がまだ残っています。粘り強くそうした会社を探すのも手。
とはいえ、最低賃金のアップなど、国が主導し労働環境を底上げしない限り、大きく状況は変わらないでしょう」

労働者個人が自力で対策するのにも、限界があるのだ。