学生優位の新卒採用、親の存在感が台頭…内定辞退恐れる企業が「オヤカク」に注力

 新卒採用で学生優位の「売り手市場」が続く中、企業側が学生の内定辞退を防ごうと親の意向を確認する「オヤカク」が広がっている。辞退理由に親の反対を挙げる学生が絶えないためで、企業は親子参加の会社説明会を開くなどして、親の不安解消に努めている。

[特集]本格化目前 どうなる? 25年卒就活
 ソフトウェア商社「アシスト」(東京)は昨年12月中旬、今春入社予定の学生11人とその親17人が参加する「オフィス見学ツアー」を開催した。1972年設立のIT企業だが、「知らない会社で不安」などの親の意見を理由に内定を辞退されたことがあり、数年前から最終面接の合格者に親が入社に賛同しているかを確認するようになった。ツアーは親に安心してもらおうと初めて企画した。
 学生と親は、社員から1日の業務などを聞き、30分かけて社内を見学した。入社予定の女性(21)の母(54)は「IT企業は夜遅くまで働くブラックな印象で心配だった。女性社員の話を聞き、結婚や出産時も働きやすいとわかった」と話した。女性は「やっと安心してくれた」と笑顔を見せた。

 就職情報会社「マイナビ」が、2022年度に就職活動した学生の親を対象に調査したところ、オヤカクを受けた人は48%に上った。18年度調査では18%だった。複数の内定を得て悩む学生の支持を取り付けようと、親に接触する企業は増えているという。
 選考過程で2回オヤカクを行う人材サービス「ビースタイルホールディングス」(東京)では、コロナ禍以降、東京での一人暮らしを心配する親が増えたという。担当者は「若手社員が家計簿を学生に見せ、しっかり暮らせていると親に伝えたこともあった」と明かす。
 IT企業「アイデアル」(大阪)は3年前から親向けの会社案内を作成。経営状態や定年まで働いてほしいことなどを記している。担当者は「親に安心してもらえたのか、内定承諾後の辞退はない」と語る。
 就活支援を手がける「ベネッセi―キャリア」が大学生446人から回答を得た昨年の調査では、就職先について「意見を一番重視したい人」は、親(24%)が最多だった。博報堂若者研究所のボヴェ啓吾代表は「学生は身近で自分を見てきた親の助言を大切にする。ただ、世代間で価値観は異なる。自分で納得してから決断してほしい」と話している。
 ◆オヤカク=採用企業が学生の内定時などに「(入社について)親の確認を取る」こと。内定通知書を親にも出したり、親向けの内定同意書を作成したりする企業もある。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0e0ecd11a87668158debd4c1d554aa31782f2878