政策正常化へ前向き意見相次ぐ、「要件満たされつつある」-日銀意見
2024年1月31日 8:55 JST
更新日時 2024年1月31日 11:26 JST
物価目標達成に現実味、見通せればETFの買い入れは停止が自然
発表後に円高進行・長期金利上昇-近い将来のマイナス金利解除意識

日本銀行が22、23日に開いた金融政策決定会合では、大規模な金融緩和政策からの正常化に向けた前向きな意見が相次いだ。「主な意見」を31日に公表した。市場は近い将来に日銀がマイナス金利解除などに踏み出すことを意識して本格的に織り込み始めている。

  ある委員は、2%物価目標の実現の鍵を握る今年の賃上げについて「過去対比高めの水準で着地する蓋然(がいぜん)性が高まっている」と述べ、「マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満たされつつある」と主張。物価目標の達成が「現実味を帯びてきている」とし、「出口についての議論を本格化させていくことが必要だ」との意見も出た。

また、「2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現の確からしさについて、具体的な経済指標を確認することで見極めていく段階に入った」、「能登半島地震の影響を今後1ー2カ月程度フォローし、マクロ経済への影響を確認できれば、金融正常化が可能な状況に至っ たと判断できる可能性が高い」など正常化に前向きな意見が並んだ。

大規模緩和の一環として実施してきた上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(J-REIT)の買い入れについては、2%目標の持続的・安定的な実現が見通せるようになれば、やめるのが自然であるとある委員が指摘。

マネタリーベースの拡大方針を示したオーバーシュート型コミットメントの在り方の検討が必要との見解も示された。

日銀は1月会合でイールドカーブコントロール(YCC)を柱とする大規模な金融緩和策の維持を決めたが、経済・物価情勢の展望(展望リポート)に2%の物価安定目標を実現する確度が「引き続き、少しずつ高まっている」との表現を新たに盛り込んだ。今回の公表内容は、政策正常化に向けた前向きなメッセージと受け止めた市場で再燃している早期のマイナス金利解除観測を後押しする内容となった。

大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、日銀がマイナス金利解除の流れを作ろうとしていることは明白で、展望リポートや植田和男総裁の会見に続き、解除に向けた「お知らせの第2弾」と指摘。

3月解除も射程に入っているとの見方を示した。

ETFとJ-REITの買い入れの停止などの意見もあり、異次元緩和を全て見直す可能性もあるとみている。

植田総裁は1月会合後の記者会見で物価目標実現の確度について展望リポートと同様の認識を示すとともに、焦点となっている今年の賃上げについて大企業を中心に前向きな発言も見られると指摘。

マイナス金利を解除しても「大きな不連続性が発生するような政策運営は避けられる」、「極めて緩和的な金融環境が当面続く」と解除後の金融政策運営にも言及していた。

主な意見の発表後、市場では早期の政策修正観測が一段と強まっている。
円の対ドル相場は一時147円19銭と約40銭円高に振れた。
債券市場では長期金利(新発10年物国債利回り)が0.75%と前日から4.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇している。