「いらっしゃいませ、こんにちは!僕はミレルンって言います!」。群馬県前橋市にある住宅展示場のモデルルームで客を迎えているのは、アバターロボットの「ミレルン」だ。操作をしているのは、直線で約370キロ離れた大阪市の自宅にいる摘枝ソロルさん(32)。かつて引きこもりを経験していたが、引きこもり当事者や経験者の就労を支援する会社から紹介を受け、いまミレルンの操作業務に就いている。ロボットの遠隔操作は引きこもりの経験者には取り組みやすい仕事だったが、住宅販売という慣れない場でのコミュニケーションには戸惑いがあった。当初は客からの質問に答えられず、できたのはあいさつ程度。それでも、接客を重ねていくうちにお勧めポイントを積極的に案内したり、コミュニケーションを取ったりすることができるようになっていった。新たな就労機会を切り開きつつある摘枝さんが、その先にめざしているものは?

モデルハウスを訪れる客からは、ミレルンのドラえもんのような愛くるしさに思わず笑みがこぼれる。ミレルンを導入したのは、東京の不動産テック企業カーザロボティクスだ。社長の細谷竜一さんは、その理由をこう語る。

「営業マンがいると、お客さんはどうしても買わされる圧を感じて緊張してしまう。無人にすることでお客さんが家を気軽に自由に見て回って、まずはこの家を好きになってもらう。そんな中で場を和ませる存在としてロボットがあればいいなと思いました」

事前の社内での話し合いで、「引きこもりの人にロボット操作を行なってもらえればいいのではないか」というアイディアが出たという。「自宅に居たままリモートで操作してもらえればいいし、パソコンが得意そうなのでロボット操作もすぐに覚えてくれるのではないかと思った」と細谷さんは説明する。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a677819a02ca739bff3e3d5711b56d1148357a62