民衆を威圧せよ…!苦境にあえぐ中国人民の暴動に備え、習近平が密かに新設した「軍事組織」

中国で恐怖政治が始まった…!

 中国で1月26日、春節(旧正月)休暇に伴う国民の大移動に今年は異変が起きている。

 前編『いま中国で急速に広がる「習近平への憎悪」…そのウラで起きている春節大移動の「異変」と、中国のシリコンバレーに溢れている「失業者の群れ」』で紹介したように、期間中に無料となる高速道路の利用が増え、公共交通機関の利用が前年比で14%も減少したのだ。

 中国人の節約志向が高まったのは、経済の深刻な悪化にあることは言うまでもない。

 コロナがあけても、一向に回復しない雇用状況は、中国のシリコンバレーと呼ばれ、経済成長のシンボルだった深圳でも深刻だ。リストラされたことを家族に打ち明けられず、出勤したふりをして図書館ですごす元企業幹部たちが大量に出現しているという。

 雇用不安は、4億人とも言われる中間層を苦境に追い込んでおり、それに対して政府は恐ろしい対策を行うようになっている。

 まずは、中間層の苦境から見ていこう。

賃金カットが横行

 中国の求人サービス企業の調査によれば、昨年、オフィスワーカーの32%が賃下げを経験した(1月31日付ブルームバーグ)。

 この割合は調査開始以降で最も高いが、実態はさらに悪いと思う。フローベースのカネの流れが細っていることに加え、ストックベースの「富」が減っていることも頭が痛い問題だ。

 中国人にとって最大の富が不動産であることは言うまでもない。資産価値の下落ばかりか、住宅ローンの延滞のせいで不動産を奪われるケースも急増している。中国の民間不動産企業によれば、昨年の住宅差し押さえ件数は前年に比べて43%も増加した。今年も差し押さえが増加することは確実視されている(1月22日付ロイター)。

 株式投資も悲惨な状況だ。中国本土と香港を合わせた株式市場の時価総額は前回のピーク時から約6兆ドル(約885兆円)も目減りしている。

4億人の中間層が抱く不満
4億人いるとされる中間層の没落が懸念されている

 このような状況を受けて、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは23日「中国の中間層の富が減少し続けている」と報じた。

 中国政府は年収10万~50万元(約206万~1030万円)の3人世帯を中間層と定義しており、それに従えば、中間層の人口は約4億人、中国人全体の約3割に相当する。

 21世紀に入り、着実に増加してきた中間層の経済事情が急速に悪化しているのだ。

 中国メディアは「中間層の懐事情が悪化したため、憧れの的だったピアノがまったく売れなくなった」「中間層の親は子供の結婚に消極的になった」などと報じている。

 景気の立て直しを図るため、大型刺激策を求める声が高まっているが、中国政府は今年も実施する可能性が低いのではないかと筆者は考えている。

 中国の昨年末のGDPに対する債務比率が286%を超え、過去最高を更新しており(1月17日付ブルームバーグ)、景気対策の実施は「借金漬け」の状況をさらにひどくしてしまうためだ。

 経済の早期回復が困難になる中、習近平国家主席は政府関係者に倹約を強く求めているが、この程度のパフォーマンスで中間層の不満を抑えることはできないだろう。

民衆を威圧する「人民武装部」を新設

 危機感を高める政府はネット上で流れる社会問題に関する情報の統制を強めているが、注目すべきは国有企業などに人民解放軍が管理する準軍事組織「人民武装部」というセクションを新たに創設させていることだ。

 民衆暴動などで襲撃された場合、駐留している部隊が企業を防衛する役割を果たすというのがその理由だという(2023年12月31日付米ヴォイス・オフ・アメリカ(VOA))。

 「力」で強引に封じ込めようとするのはいかにも中国政府らしいやり方だが、4億人規模に膨れ上がった中間層の怒りをこれで抑えることができるとは思えない。強権的な手法に頼れば頼るほど、政府に対する不満が一層高まってしまうのではないだろうか。

 さらに連載記事『習近平、打つ手なし…! 中国製EVが「バカ売れ」するウラで、中国で「EV墓場」が大問題になっていた! 』では、中国経済の苦境の実態をレポートしているので参考としてほしい。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0a4f7f43b9d50d38c525da38297248535eff6a7d