民俗的な語法を現代的な手法に転化した20世紀ハンガリーの作曲家バルトーク(1881~1945)には、スタンダード化している名作も多い。だが、3曲残されたピアノ協奏曲は“無名ではないが、頻繁に演奏されてもいない”といった位置にある。今回ご紹介するのは、その3曲を1枚に収録したディスクである。
ピアノ独奏はピエール=ロラン・エマール。1957年フランス生まれの彼は、現役屈指の名手で特に現代作品の演奏に関しては第一人者といっていい。バックを務めるのはエサ=ペッカ・サロネン指揮のサンフランシスコ交響楽団。58年フィンランド生まれのサロネンも、近現代作品に定評ある敏腕指揮者で、自身優れた作曲家でもある。彼が2020年から音楽監督を務めるサンフランシスコ響は、アメリカの名楽団ならではの機能性を有している。
つまり本盤は、20世紀作品における現代最上位の音楽家による演奏だ。となれば、超モダンでシャープな表現が予想される。ところがここで聴けるのは、明快で表情豊かな、温かみすら感じる音楽である。
現代最上位の音楽家によるバルトーク 【コラム 音楽の森 柴田克彦】(オーヴォ) - Yahoo!ニュース
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