https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240208/k10014352331000.html
パティシエ 辻口さんから広がる“甘い"支援の輪
「いちパティシエとしてできることを」
世界で活躍するパティシエ、辻口博啓さん
能登半島地震で大きな被害を受けた石川県七尾市の出身で、ふるさと・能登地方への支援を続けています
「広がれば大きな力になるみんなで、必ずみんなで復興していきたい」
その支援の動きは「輪」となり、多くの人たちを巻き込み始めています
バレンタインデーの会場で…
2月初め、名古屋市内のデパートの一角
バレンタインデーを前にしたイベントの会場にできた行列の先に、辻口さんの姿はありました
自身が手がけるチョコレートを買いに来たお客さんに対応していると「復興を応援しています」と話しかける人もいました
さらには、親戚が被災したという人も…
客「親戚が能登なんです2軒、焼失して…」
辻口さん「ああ、そうですか…輪島ですか?」
客「そうです、みんな無事だったからよかった」
辻口さん「命あっての、ですからね頑張っていきましょう」
ふるさとは大きく傷ついても…
辻口さんは石川県七尾市の出身です
洋菓子の世界的な大会で数々の優勝を経験七尾市内にも店舗を持ち、手がけるスイーツには能登地方の食材を積極的に取り入れるなど深いつながりを持ってきました
しかしそのふるさとは、今回の地震で大きく傷つきました
辻口さん
「子どものころから慣れ親しんだ町並みが一気に倒壊していて、風景が様変わりしている蔵が被災し泣き崩れる、歴史あるしょうゆ店の店主さん自分の店が倒壊などのおそれがあると判定された飲食店仲間たち現実を受け入れられませんでした」
自身の店舗も大きな被害を受けるなか、辻口さんは避難所に菓子を届けたり、被災した仲間と炊き出しに参加したりするなど支援を続けてきました
今回のイベントでは、伝統的な手法を用いて珠洲市で作られた塩を使った商品も販売しました
珠洲市の塩を使ったシュークリーム
復興を後押ししたいと、手にとる人が相次ぎました
シュークリームを買った人
「買うことによって少しでも協力できれば」
「家族が被災地のことを考えるきっかけになれば」
辻口さんを動かしているのは、被災したふるさとに対する危機感です
辻口博啓さん
辻口さん
「いろんな人たちの人生というか、そういうものを育んできた町が崩壊していくのを見たときに一日も早い復興を考えないと、本当にこの町から人がいなくなっちゃう能登に人が居つかなくなってしまう」
募金箱が全国のケーキ屋さんなどに
辻口さんは、地震の直後から、募金活動を始めました
SNSで発信したところ、仲間のシェフなどから、応援のメッセージや自分も募金を始めたので送りたいという声が相次いで寄せられました
投稿は全国から…
メッセージは直接面識のない人からも届くようになり、いま、そうした支援の輪が大きく広がっています
奈良県の洋菓子店
「メッセージ失礼いたします辻口シェフが発信する現地の混乱をとてもひと事とは思えず、店頭に募金箱を設置しました」
福島県のケーキ店
「田舎の小さなケーキ店でもできることはないのかと考え、募金を辻口シェフにお願いしたいと思い連絡させていただきました」
今までつながりがなかった人も…
そのひとりが、東京・港区にある洋菓子店のシェフパティシエ、横山翠さんです店頭には募金箱が…
横山さん
「震災の被害を見て心を痛めていて、私も何かできないかなと(辻口さんと)面識もなかったので、突然、メッセージを送っていいのか迷ったけど、すぐに返信をいただいて、そこから募金箱を設置しました」
おつりを全部入れてくれるお客さんもいるといいます
「微力だと思うが、私も『輪』に入って協力したい」
賛同した人が、募金箱を持った写真を辻口さんへそれを辻口さんがSNSで発信
協力の申し出は80件を超え、最近では、パティシエやシェフ以外の人もその輪に加わっています
「全く予想していなかった本当にうれしかったですね今まで全く僕とつながりのないパティシエたちが、僕がやっていることに賛同してくれて『力になりたい』ってつながってくれるお互いの思いが一つになる」
集まった募金は今後、石川県に直接届けることにしています辻口さんは、子どもたちの食事や教育のために使ってほしいと話します
「僕自身も小学校3年生の時に食べたショートケーキに感動してパティシエになったいちパティシエですから、パティシエができることを、無理なく長く続けられること、そういったことを僕はやっていく」