「30歳で年収2000万円」を捨て、優秀層が辞めていく

ここまで読んで、「商社にアルムナイは必要ないのでは」と感じた人は多いかもしれない。短期的には、その通り。業績も絶好調で、業績連動ボーナスまで含めると「30歳で2000万円近くの年収になる人も多い」(丸紅出身の人材ベンチャー社員)という好待遇から、採用市場でも依然人気だ。

ただし、働き手を取り巻く意識の変化は商社も無縁ではない。かつては「家業を継ぐ以外の理由で辞めるのは、脱落者か頭がどうかしてる人」(1990年代前半に新卒入社した三井物産OB)という感覚はごく普通だった。
しかし、若手商社パーソンは別の動きを感じている。
丸紅を30代で辞めた起業家の小澤悠氏(NEXCENT代表)は、労働組合に従事していた時に丸紅を含む総合商社の退職事情を調査した。

「リーマンショックの後くらいから若手の離職が顕著に増えた。上位の他社では入社6年目までに新卒入社150人の内60人がやめた年もあった」(元丸紅・小澤氏)

「元物産会」の橋本氏は、若手の離職が増加傾向とされる理由を次のように述べる。

「総合商社は依然として年功序列で、大きな仕事を任されるようになるまでに時間がかかる。また、本体の仕事は関連会社管理のような、ビジネスの現場から遠いものが多い。コンプライアンス遵守の流れによって急速に職場のホワイト化も進んでおり、より早く成長したい人が外に出る」(元物産会・橋本氏)

40歳前後で商社を辞めた複数の元商社パーソンたちは、
「海外駐在では裁量ある仕事ができるが、帰任すれば歯車になって管理系の仕事中心になる。自分で仕事のオーナーシップを持ちたいから、退職を決めた」
と口々に言う。

商社4年目の大手商社現役社員も「商社は大企業でルールも多く、社内仕事の割合が高い。50歳までいようとは思わない」とヒアリングに答えた。

この構造はそう簡単に元に戻ることはないだろう。
つまり、経営者志向の強い、仕事ができる“シゴデキ”優秀人材の「流出」は、今後も続くと考えられる。
また、商社特有の「濃いつながり」自体もここ数年で急速に変化しはじめている。

続く
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