埼玉県熊谷市内の民間企業が所有するビルについて、熊谷市が固定資産税と都市計画税を半世紀以上にわたって誤って過大に徴収していたことが8日、毎日新聞の取材で明らかになった。市は時効などにかからない2014~22年度の9カ年度分(計8350万円)を返還する方針で、返金額は利息を含め1億円規模になる見通し。だが、残り42カ年度分の数億円は企業側が泣き寝入りする格好になるという。

 同市資産税課などによると、問題のビルは1971年に建設され、89年に一部増築された。完成時、市と県の熊谷県税事務所が合同で不動産の評価作業を行った。その際、使われた資材、設備、床面積などを誤認、さらに評価の補正も誤った結果、過大な不動産評価額に決めてしまったという。

 2023年2月、企業側から「建築時の評価が過大ではないのか」という申し入れが市に寄せられ、誤った評価額を基に課税していたミスが発覚した。

 固定資産税など地方税の時効は5年と定められている。時効にかかる分に関して、市では「固定資産税に係る返還金要綱」を定め、最長10年までさかのぼって返還できる制度になっている。それでも、1972年度から2013年度までの42カ年度分は返還されない。市は23年末から交渉を始め、「会社側には納得してもらった」(小暮倫敬・資産税課長)としている。

 今回のミスについて、小暮課長は「当時の担当職員の評価技術のレベルが低かったのが原因。県とも情報共有する中で、二度とこうした事態が起きないよう努めたい」と話した。1億円規模とみられる返金については3月の補正予算で対処し、早急に返還したいとしている。
https://mainichi.jp/articles/20240208/k00/00m/040/329000c