プーチンが突き付ける驚愕の降伏条件「傀儡政権樹立とハルキウ・オデーサ両州も割譲」―英軍事シンクタンクが分析
「2026年までの勝利がロシアの戦略目標、それ以降は急速に消耗する」

ロシアの砲弾生産量は年間300万発で頭打ち

 ロシアの弾道ミサイルや巡航ミサイルは西側の部品に依存している。当初、西側の輸出規制は抜け穴だらけだったが、首尾一貫したアプローチを確立すればロシア軍需産業のサプライチェーンを混乱させる可能性がある。抜け穴のある輸出規制でも部品コストは30%上昇し、供給拡大を制限している。

 ロシア国防省は25年に領土を大幅に獲得するため、今年、400万発の152mm砲弾と160万発の122mm砲弾の製造・調達を見込んでいる。

 しかしロシアの軍需産業は152mm砲弾の生産量は昨年の約100万発から今年中に130万発にしか増やせず、122mm砲弾も80万発が限界だとロシア国防省に報告している。

 ロシアは300万発の備蓄を引出すとともに、ベラルーシ、イラン、北朝鮮、シリアと弾薬の供給・生産契約を結ぶ。北朝鮮からの約200万発の122mm砲弾で今年はしのげても、来年には152mm砲弾の大幅な不足に直面する。ロシアの砲弾生産量はMLRSなどあらゆる種類の砲弾を含めて年間300万発で頭打ちになる可能性が高いとワトリング氏らは推計する。

「西側が適切な資源をウクライナに提供できなければプーチンの勝利の方程式はもっともらしく見える。しかしロシアの攻撃を鈍らせるのに十分な弾薬と訓練を与え続ければ、ロシアが来年大きな利益を得る可能性は低い。26年以降にはシステムの消耗でロシアの戦闘力は著しく低下し始め、ロシアの軍需産業は停滞する可能性がある」(ワトリング氏ら)

プーチンの勝利の方程式を突き崩せ

 来年までウクライナ軍の抵抗力を維持できれば、プーチンの勝利の方程式を突き崩すだけに留まらず、ウクライナ軍の合理的な動員・訓練プロセスを構築するのに十分な時間を確保できる。「ウクライナに有利な条件で戦争終結を交渉させる機会を構築する上で極めて重要だ」とワトリング氏らは米国をはじめ西側諸国の首脳に訴える。

英有力シンクタンク「国際問題戦略研究所」(IISS)は過去1年だけでもロシア軍は3000台以上の装甲戦闘車両を失い、22年2月以降だと8800台近くを失ったと推計する。月平均で数百両の装甲車と大砲を失っているにもかかわらず、ロシアは昨年、少なくとも1180~1280両の主力戦車と約2470両の歩兵戦闘車、装甲兵員輸送車を保管庫から再生させた。

 ロシア軍は現在の消耗率でもウクライナへの攻撃をあと2~3年、あるいはそれ以上維持できるとIISSは分析する。西側は米国と欧州だけでなく日本や韓国を含め、ロシアを上回るペースでウクライナへの武器弾薬供給を実現できなければ、ウクライナ割譲と傀儡大統領を受け入れるという屈辱を味わうことになる。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/79414