https://www.sankei.com/article/20240220-JA6XUDHIQBIXFLANAIDDYIKQJI/

デメリットとして、共同親権だと子供が父母の間を行き来する二重生活を強いられることもあり、負担が増すことになる。子供の進路や住居の変更などの重要事項で父母の意見が一致しない場合、裁判所が関与した紛争となり、子供がもめ事にさらされ、精神的にも不安定になってしまう。

「共同親権」反対派は、現行の単独親権制度でも親権のない親と子供の関係が切れるわけではなく、実際に共同で養育・監護している離婚家庭もあり、「共同親権でないと子供が困る」という立法事実はない、と指摘している。

特にDVや子供への虐待に苦しむ親からは「家庭裁判所が適切に判断できるのか?」という不安の声が上がっている。DVや虐待は別居・離婚した後も続くことが多く、加害者側は子供と会う機会を利用して精神的・肉体的支配を続けようとする傾向がある。殊に精神的DVは証明が難しい。全国の児童相談所に寄せられる虐待相談は毎年増え続けており、問題は深刻化している。

法案が成立すれば、間違いなく今よりも家庭裁判所が果たす役割は大きくなり、業務量も増えるだろう。ただでさえ人手が足りていない家裁で、調査官を増やし、判断のガイドラインを作成するなどの体制づくりを進めなくてはならない。

要綱案の内容そのものに懸念が残るだけでなく、実際の運用や支援についてもまだまだ多角的な検討が必要である。重要なことは「子供の視点から見て利益になっているのか?」である。国会での慎重な議論に注目したい。

堀内恭彦(ほりうち・やすひこ) 弁護士。