日本の伝統文化や現代ポップカルチャー、美しくおいしい日本食などに魅了されて、日本に「はまる」外国人旅行者は近年、アジア人に限らず欧米人にも非常に多い。30年以上前に来日したオーストラリア人のデニス・ウェストフィールド氏もその一人だった。

 ところがいざ日本で働き、長年観察していると、洗練された顔とは裏腹に、奇妙で不可解な日本社会の仕組みが浮かび上がってきた。しかもその仕組みや構造は「日本人を幸福にしないものばかり」だというのに、当の日本人たちはそこから脱却する自由を持たないように見えた。

 日本の新聞社での勤務経験を持つ知日派ジャーナリストでもある著者は、それを「日本人という呪縛(The Curse of Japaneseness)」と呼んだ。教育制度や社会、政治などで詳細な例を挙げて国民に覚醒を促した日本人論が本作だ。

 東日本大震災といった大災害で、暴動や略奪を引き起こさない日本人のモラルの高さには、世界中から称賛の声が上がる。だが著者はそのことについて「東京のラッシュアワーの満員電車」とシンクロすると述べる。

 人権や尊厳が守られるべき先進国の国民が、すし詰めで人権を蹂躙(じゅうりん)した満員電車でも不平不満を言わず、何十年も状況が改善されていないことが示すように「日本人は『困難な状況で声を上げる自由』を奪われているに過ぎない」と鋭く指摘している。

https://news.yahoo.co.jp/articles/d39ebc6d5b2db554a3a4dc0d573a033591ba77e7