兵庫の市役所に近い公園にキツネ出没…タヌキとにらみ合い、うなり声上げる映像も

 兵庫県伊丹市の市街地にある 昆陽池こやいけ 公園に、キツネが数年前から出没している。園内に設置した自動撮影カメラで、撮影に成功した。
トンボを追い回したり、小動物をくわえたり。タヌキと鉢合わせになる姿も。
ただ、キツネはエキノコックス症を媒介する恐れがあり、専門家は「生態の調査が必要」としている。(望月弘行)

 昆陽池公園(27・8ヘクタール)は、農業用のため池・昆陽池が4割を占め、周辺の豊かな自然を生かして整備された。
近くには市役所があり、住宅街に囲まれている。

 公園内では2014~16年、タヌキの目撃情報があり、伊丹市昆虫館職員の前畑真実さんが17年から調査を開始。
公園内の湿地や、けもの道に赤外線自動撮影カメラを備え付けた。

 18年からは、昆陽池公園野鳥観察グループ「チームK」とともにカメラを増設し、計9台になった。共同で調べたところ、キツネの姿が確認できたという。

 今回の映像は昨年2~8月に撮影された。水辺で泳いでいたヌートリアをくわえて走り去る姿や、タヌキとにらみ合い、うなり声を上げる様子も。
小川を飛び回るトンボを追いかけ、勢いよくジャンプするさまも映っており、けもの道を歩く2匹の後ろ姿もあった。

 チームK代表の尾崎由紀さん(59)も昨年2月、キツネに遭遇して、その様子を写真に収めた。

 今年も姿が確認されており、武庫川から水路を通じて行き来していることが考えられるという。
大阪市立自然史博物館の和田岳学芸員は「2匹は雄雌ペアの可能性があり、巣穴を掘って、今後、繁殖するかもしれない」と話している。


 伊丹市昆虫館では5月6日まで、「伊丹の自然」をテーマにした企画展が開かれている。
キツネをはじめ、園内で撮影されたタヌキ、アナグマ、ハクビシンなど哺乳類10種類の映像を上映している。問い合わせは同館。

目撃情報、神戸でも

 キツネは雑木林や農耕地などが広がる里山で暮らしてきたが、近年、緑地が増えてきた市街地で、しばしば見かけられるようになった。

 県内では、六甲山系に近い神戸市内の住宅街で複数の目撃情報があるほか、数年前には姫路市中心部にあるJR姫路駅近くの公園にも出没した。

 札幌市では、市街地でキツネの目撃が相次ぎ、共存のあり方が課題に。北海道内では年間数十人のエキノコックス症患者が報告されており、
自治体が「キツネに餌付けをしない」「沢水などの生水を飲まない」と注意を呼びかけている。

 愛知県の知多半島では2014年以降、野犬数匹からエキノコックスを確認。
薬入りの餌をまくなどの対策が進められており、キツネの生態に詳しい麻布大獣医学部の塚田英晴教授は
「フンなどを積極的に調査して、感染拡大防止策を講じる必要がある」と警鐘を鳴らす。

 ◆ エキノコックス症 =寄生虫のエキノコックスによる感染症。
キツネや野犬のフンを介し、卵が人の口から体内に入り肝臓や肺に寄生して肝障害などを引き起こす。
対策は、外出後の手洗い、山菜や生水の加熱など。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20240223-OYT1T50032/
https://www.yomiuri.co.jp/media/2024/02/20240223-OYT1I50034-1.jpg
園内に設置された自動撮影カメラが捉えたキツネ。動画でトンボを追いかけ回している様子がわかる(2023年8月、伊丹市で)=市昆虫館提供