「紀元2684年」。奈良県橿原市の橿原神宮に、神武天皇即位からの年を大書した木札が掲げられている。84年前の皇紀2600年の昭和15年2月11日、神宮一帯で奉祝行事が行われ、玄関口となったのが現在のJR畝傍(うねび)駅。皇室が休憩された貴賓室などが残る。

▶その駅舎が今、取り壊しの危機にある。JR西日本は各地の駅舎のコンパクト化を進め、同駅も対象。JRは駅舎の無償譲渡を橿原市に打診したが、市はコスト面から拒否。保存に二の足を踏み、今年度内に整備案を示す。

▶駅にはさまざまな歴史が刻まれる。昭和34年、当時の皇太子ご夫妻(現・上皇ご夫妻)が結婚報告で神武陵参拝の際に利用された。華やかな面だけではない。戦時中には出征兵士を見送り、戦地で散った若者の遺骨が無言で戻ってきたと聞いた。皇紀2700年まで16年。そのとき駅舎は-。市の判断は重い。

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