子ども1人に「1100万円」、住宅提供も 韓国が少子化対策に躍起

 世界的にも異例のペースで少子化が進む韓国で、自治体や企業が思い切った支援策を打ち出している。子どもが産まれたら、「1億ウォン(約1100万円)」を支給する、との発表が相次いでいる。

 ソウル近郊の300万都市で、韓国の空の玄関となる仁川国際空港を抱える仁川市。昨年12月、「仁川型の政策大転換の始まり」などと称し、市内で産まれた子どもを対象に、18歳まで合計で「1億ウォン」を支給するという子育て支援策を打ち出した。

 これまでも児童手当や保育料支援などで子ども1人あたり合計で7200万ウォンを支給してきたが、今回は教育費などがかさむ8歳以降にも1980万ウォンの手当を支給するなど、新たな支援策をプラスすることにした。

 同市の柴賢晶・女性家族局長は「結婚しない若い世代には、子供を産んだらお金がたくさんかかる、自分の給料ではだめだ、という認識が刻まれている。自治体が責任を持って支えるという姿勢を肌で感じてもらうようにしたい」と話す。今後は若い世代向けの住宅供給や雇用対策などにも力を入れる計画だという。

 一方、企業では2月、住宅事業などを手がける富栄グループが打ち出した「異次元の対策」が、韓国内で話題をさらった。2021年以降に子どもが生まれた社員を対象に、子ども1人につき1億ウォンを支給するというものだ。

 「低出産(少子化)がこのまま続けば、20年後には国家存立の危機に陥るだろう」。グループの李重根(イジュングン)会長はこんな考えを語っている。さっそく計70億ウォンの支給が決まった。加えて、3人目以上が産まれた社員らには一定の条件のもとで住宅も提供する、という。

 韓国大統領府によると、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は2月13日、こうした企業による大規模な「出産支援金」支給の動きを歓迎し、税制面での支援拡大などを指示したという。政府や自治体、企業が様々な少子化対策に取り組んでいるが、出生率の低下に歯止めをかけるのは容易ではない。(仁川=稲田清英)

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