バルト海は「NATOの海」に:スウェーデン加盟がロシアに与える打撃

3/7(木) 15:12配信

スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟によって、バルト海のほぼ全域が「NATOの海」と化し、バルト三国の防衛・抑止態勢も大幅に強化される見通しとなった。昨年のフィンランドに続くスウェーデンの加盟は、ウクライナ侵略戦争がもたらした地政学的反作用であり、ロシアのプーチン大統領には手痛いしっぺ返しとなりそうだ。

北欧4国のそろい踏み

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欧州のNATO加盟国

スウェーデンとフィンランドは、冷戦終結後も長らく「中立国」の立場を貫いてきた。だが、ウクライナ侵攻開始2カ月後の2022年5月、「ロシアは一変した」、「われわれには(NATOの)集団的自衛が必要になった」として、そろって加盟申請に踏み切った。既加盟のノルウェー、デンマークに両国を加えた北欧4国がそろったことで、NATOは北欧~北極圏一帯を防衛する切れ目のない態勢を手にしたことになる。

欧州の安全保障環境を大きく変える歴史的決定というだけではない。とりわけ重要とされるのは、ロシアが戦略的に重視するバルト海が加盟国で包囲された「NATOの海」となることだ(※1)。ロシア海軍はバルト海に臨むサンクトペテルブルクと飛び地カリーニングラードの2カ所に基地を持ち、バルト海経由で北大西洋へ向かう戦略拠点としてきた。

バルト海は平均水深が約55mという浅い海で、水路や海底の地形は複雑だ。海底にはNATO加盟諸国の生命線ともいえる通信ケーブルや天然ガスパイプラインも多く敷設されている。その実情を熟知して国防に生かしてきたスウェーデンの加盟によって、加盟国全体の戦略的インフラの保全と防護態勢の飛躍的向上が期待されている。当然ながら、バルト海の制海・制空権も確保されることになり、ロシア軍の動向を海と空から監視する警戒・探査が拡充される。

バルト海のほぼ中央に位置するゴットランド島はカリーニングラードから直線距離で300km、ストックホルムからは190kmにあり、バルト海を制する要衝とされている。NATO加盟後はこの要衝の島の警備も重点的に強化される見込みだ。

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