「アブラカダブラ」という言葉を聞くと、何か不思議なことが起きたと思うはずだ。変身かもしれないし、ちょっとしたトリックかもしれない。この言葉自体は奇妙だが、今や不可能とされることを示す普遍的なサインとなっている。アブラカダブラの正確な語源については、専門家の間でも意見が分かれているが、古い言葉であることは間違いない。

 アブラカダブラが最初に登場するのは1800年以上前のクイントゥス・セレヌス・サンモニクスの著書で、発熱の特効薬と記されている。抗生剤が存在しなかった時代、発熱はマラリアの症状として致命的となる可能性があった。セレヌスは後にローマ皇帝になるゲタやカラカラの家庭教師を務め、裕福な貴族という特権的な立場がその言葉に重みを与えた。

 セレヌスは2世紀の著書『Liber Medicinalis(医学書)』で、この魔法の言葉が記された羊皮紙でお守りをつくって苦しむ人の首にかけるよう、助言している。逆三角形の羊皮紙を用意し、1行ごとに1文字ずつ減らしながら繰り返すというのがセレヌスの指示だ。

ABRACADABRA
ABRACADABR
ABRACADAB
   ︙
   AB
    A

 これを11行繰り返すと、文字がなくなる。「文字がなくなるように、熱も消え去る」とセレヌスは述べている。

(後略)

https://news.yahoo.co.jp/articles/a7aebcd513abb71a4dc386df0c96f43965a9589a